COCと独立経営<689>「お天気商品」よりも2025年の現実 – 関 匤

“風が吹けば桶屋が儲かる”ということわざがあります。風が起こす派生効果によって最終的に桶がたくさん売れるというこじつけ話です。

今冬の灯油商戦に譬えれば、“北風吹かず油屋はあぶら売り”です。書いているのは1月30日時点ですが、街の空気は春の感覚です。

秋口にCOCの皆さんと心配していたのは、今冬の灯油需給が相当タイトになりそうなことでした。船舶のIMO規制が1月から始まって、舶用C重油の硫黄分希釈のために相当量の中間品が転用されると考えていたからです。またサウジ石油施設がフーシ派のドローン爆撃で炎上するなど、国際情勢も不穏でした。

ところがふたを開けてみれば想像以上の暖冬が続き、寒冷地で灯油が動かないために、中間卸しは11月半ば頃から“狼狽売り”になっています。某会員は「元売週決めが上がっているのに商社見積もりは値引き」と首をかしげます。仕入れ価格が下がったのは嬉しいのですが、店頭小売が出ません。あちらを立てればこちらが立たず、世の中は思い通りに動かないものです。

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桶屋の話は様々な連鎖が桶屋の儲けになる話ですが、暖冬は「負の連鎖」を起こしています。寒冷地のCOC会員の会社では、

①灯油が売れない(当たり前)

②除雪車が出動しないので軽油が売れない

③スリップ事故がないので鈑金が出ない

④融雪剤をまかないので車の補修が出ない

と軽油やカーケアにも波及しています。仕方がないのでローリーでドライブしながら“あぶらを売って”いるそうです。

灯油に限らずガソリンも天候に左右されます。雨が降れば減販で、洗車収益は出ません。予報を見て何らかの対応はできますが、どんな優秀な経営者でも天候そのものをコントロールできません。

同じように市況も人為的に動かせません。動かせば公取委が飛んできます。石油はお天気と市況任せの商売だとあらためて考えさせられました。

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石油協会のSS経営実態調査の「販売業者の声」という資料を見ました。業転格差、不当廉売、低マージン…等々、元売再編で粗利が改善されたと思いきや、様々な不満、批判の声が出ています。

しかし、私にしてみたら昭和の時代から同じ話ばかりです。「天候・市況商品」を議論しても神学論争の隘路に入りがちです。リアルと乖離してしまいます。石商とか系列とかの「石油村コミュニティ」ならではの議論と思います。

独立経営者はリアリズムに生きています。すべてが自己責任です。だから、SSの大前提である自動車を大変革するCASEとMaaSに物凄く神経質です。中小企業で何ができるか、本気で危機意識を持っています。

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政府・国交省は「2025年の完全自動運転」を政策目標としています。

石油村の経産省は「石油は最後の砦」というコピーライターの幻想世界にいますが、国交省はリアリズムの現業部隊です。すでに新東名高速などで無人運転実験を行って、大型トラックでも高速度で数十㌔㍍をハンドル、アクセル、ブレーキ操作なしに走行しています。

環境エネルギーやEVは、近くて2030年から2050年を見込んでいますが、自動運転は2025年、すぐそこにある大変化です。

そして、自動運転車両そのものよりも、開発過程でどんな派生技術が出現するのか分かりません。すでに先取り的に実用化に入った新技術もあります。

何人かの独立経営者はお天気や市況任せに安住せず、幻想世界に入らず、すぐそこにある現実で何をすべきかに想像力を働かせています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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