COCと独立経営<699>米国は1カ月で石油供給半減 – 関 匤

COC会員に聞くと、3月のガソリン販売量は前年比五%前後の減販で推移していたそうです。しかし、月末に緊急事態宣言の話が出たとたんに一気に減速したといいます。4月は15-20%減のSSが少なくないと思います。石連統計の2月製品バランスでガソリン販売は微減ですが、うるう年なので日別換算すると約4%減でした。3、4月と明らかな数値で右肩下がりになるでしょう。

緊急時ということでL粗利は確保されていますが、この減販が続くと市況面に影響が及びかねません。SS数、ボリュームが大きい会社ほど減販によるキャッシュフロー悪化が効いてきます。対人非接触で油外販売も相当ダメージを受けていますので、油価が上がらないままで減販が続くと資金ショートや安売りが始まる恐れもあります。

もっとも、SSは2割減でも必需品だからまだましです。帝国データバンクは「新型コロナウイルス関連倒産」として15時点で56社としています。旅館、リゾートホテル、クルーズ船、レンタカー、高級飲食、旅行代理店、アミューズメントなど移動自粛が直撃しています。

このままでは激増するだけですから、政府はモラトリアムなど徳政令を速やかに行う必要があります。そしてそれぞれに取引するSSがあるわけです。

石油では米国が凄いことになっています。EIA(米国エネルギー情報局)の週別データを見ると、3月上旬までのガソリン供給は1日150万㌔㍑と通常通りでした。しかし第4週に100万㌔㍑に急落し、さらに4月第1、2週は80万㌔㍑とほぼ半減しました。

全体の製品供給も1カ月で日量340万㌔㍑が230万㌔㍑まで落ちました。EIAが統計を開始した1982年以来の最低を記録しました。バーレル換算すると米国だけで700万BDもの減少です。

ロシアを含めたOPECプラスが1千万BD規模の減産で合意しました。しかし、米国の直近1カ月の減販は減産効果の7割を減殺したことになります。

それもあって、原油相場がOPEC減産合意に反応しないどころか一段安です。原稿を書いている時点で、15日のNY市場ではついに20㌦を割り込みました。

日本のコロナ感染次第では、国内市場に米国並みの減販が起こる可能性があります。

厚労省の発表を見ていると、4月8日から15日の1週間で感染者数がほぼ倍増しています。次回公表では1万人を超えるかも知れません。緊急事態宣言以降から増加基調になっています。

厚労省は各国の状況も明らかにしています。日本は人口に比べて感染率は低く、世界平均(0.03%)の4分の1(0.006%)です。10万都市で6人の感染です。

悲惨なのがルクセンブルクで200人に1人が感染しています。カウントしてみると、同国を含めたEU諸国で世界の感染者の半数、死亡者の7割近くを占めています。今後、EUの広域経済圏が壊れてナショナリズムが台頭するかもしれません。

日本は死亡率で平均の4分の1以下(1.4%)です。フランスは15%、イタリアと英国は13%など、EUは恐怖の比率になっています。

「だから日本はまだまし」と甘いことを考えてはいません。米国は感染の絶対数はトップですが、感染率、死亡率ともに平均を大きく下回ります。やはり心理に影響するのは「感染者数」です。価格の心理と一緒で、1万という一桁違いの数字が出てくると行動はさらに委縮すると考えられます。

SS経営者の危機管理として、ガソリン半減のシナリオも想定しても無駄にはならないでしょう。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206