COCと独立経営<711> 日本は豪州モデルに近づく? – 関 匤

石油連盟の需給統計で1-5月のガソリン販売は前年同期比▲10.4%でした。1月は+4.6%増販、2月は微減でしたが、3月▲9.1%、4月▲22.3%、5月▲22.6%とコロナ禍の影響が色濃く出ています。

統計でひときわ目を引くのが輸入です。1―5月で189.4%と倍増に近い数字です。WTIマイナス原油が出現した4月は3.5倍増、5月も2倍以上に増加しています。

昨年7月から輸入が急増しており、これはコスモ石油がキグナス石油に供給を開始した時期と符合しています。コスモ石油は定修時期を除くと精製稼働率が95~96%となっており、製品輸入を駆使した供給戦略を進めています。

原油CIF価格とガソリン輸入価格を比べると、2019年暦年を加重平均すると製品輸入が1㌔㍑3200円高でした。一方、今年1―5月で見るとその真逆で輸入が2千円安です。つまり原油より安いガソリンが入ったわけです。

ガソリンの輸入先は韓国がメインでしたが、中国からの製品が増えています。19年暦年で3倍近くに伸ばし、輸入に占める構成比が6%から16%に台頭しています。

中国は国家戦略として精製・石化コンプレックス新設で製品国産化を進めています。19年5月大連で稼働した恒力石化は精製能力40万BD。年産150万㌧、エチレングリコールが180万㌧、パラキシレン450㌧等など最大級のプラントです。パラキシレン生産能力は日本の元売や石化が束になっても敵いません。2025年までにさらに11プラントが稼働する計画です。68万BDの超弩級もあり合計で424万BDと日本の精製能力を約100万BDも上回る新設プラントが登場することになります。東南アジアでも、出光ベトナムに加えてマレーシアで30万BDの最新鋭石油・石化コンプレックスが19年から稼働しています。世界的なコロナ減販の中で、製品貿易が環太平洋でさらに活発に動く環境です。

そして10日付日本経済新聞で出光興産・木藤俊一社長はこう述べています。「製造拠点の集約が進み、本当に競争力のあるところだけが残ることになる。製油所の統廃合は個社だけの話ではなく、(企業の壁を越えて連携する)オールジャパンベースに引き直せばもっと効率化できる」。

冒頭のコロナ減販は終息しても国内市場縮小は続くと見られる中で、供給面で輸入の構成比が高まっています。個々の企業が自社製油所にしがみつくより全社の精製を集約したらもっと効率化できるという発言です。

富士石油や昭和四日市石油など精製専業会社は、もともと販売を元売に分担するビジネスモデルでやってきました。「オールジャパン」という言葉は全ての元売がこの流通形態になるということです。もはや、元売レベルでは「製販分離」を見込んでいるのでしょうか。

日本の状況で連想したのは豪州です。JPEC(石油エネルギー技術センター)の豪州レポートにこうあります。

「製油所は、アジア内に建設される大規模で複雑な製油所と比較して、小さく、時代遅れである。その結果、累計30万BD以上の製油所が閉鎖され、その一部は石油製品輸入ターミナルに転換された。」

RDシェルやBPなどメジャーが非効率製油所を輸入基地などに転換した結果、供給の5割を輸入でまかなっています。上記のレポートで「豪州」を「日本」に置き換えられそうです。もっとも、豪州ほどの過激な変化を消費地精製原理主義者の経産省は容認しないかもしれませんが。

 

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