COCと独立経営<737>「E10ガソリン運動」を! – 関 匤

連日のように「カーボンニュートラル」の話題が出てきては、後継者たちがどのような事態に直面するのか気に病まない経営者はいないことでしょう。

私は自動車が完全に電動化されても、それが原理原則に叶ったものであり、国民の幸せにつながるならば致し方ないとは考えています。

以前にも書きましたが、19世紀に自動車技術は存在していましたが、道路渋滞を起こすほど大量の自動車が走る世界を想像できた人は僅かだったでしょう。しかし、第1次大戦で大量の自動車が投入され、大戦渦中にフォードがT型を大量生産し、さらにライト兄弟の飛行機がやはり大戦で出現したことでガソリンという燃料が日の目を見ました。

石油需要とは灯火用灯油であって、余剰品のガソリン留分は捨てられていました。つまり、技術革新にエネルギーの大量余剰があって自動車が市場を一気に拡大しました。これは原理原則であり国民生活を幸せにしました。理にかなっていました。

その代わり、運送の花形であった幌馬車業界は鉄道や陸運に代わられて消えていきました。これも業者は可哀そうですが、話は納得できます。

しかし、さかんにメディアが発信するカーボンニュートラルがらみの方法論はストンと腑に落ちません。

地球上に余剰水素が溢れかえっている、太陽光パネルや風力発電が既存施設だけで発電量が従来の百倍になった、大量の余剰電力があるからEVやスマートシティ電源に利用しよう、といったおめでたい話はありません。

スウェーデンの「環境原理主義少女」が1人で勝手にやるのはかまいませんが、ことは地球環境問題でありエネルギーを地球規模で考えなければなりません。私なりに考えている地球規模のエネルギーの要件は次のようになります。

①安定供給(大量に存在する)

②コストが安い

③取扱いの容易さ(輸送含めて)

④安全性

⑤環境負荷が低い

たぶん、全てを満たすものは無いでしょう。5項目で最も高い評価点のものが選択されますが、やはり量と価格が欠けると「地球規模」では戦力にならないでしょう。

…などなど偉そうに述べるのも、先般行ったCOCリモート研修で「そもそもから考える脱炭素政策―自動車はどうなる」というテーマで勉強したからです。講師は非常に分かりやすく解説してくれて、想像力を刺激されました。

ようは、京都議定書で環境問題を仕掛けてディーゼル車を世界に売ろうと画策したEUが検査不正問題で売り物が無くなったのでEVに戦略転換したのが脱炭素の本質かなと感じました。

正論は正論なので、欧州以外の主要国が軒並み政策目標で脱炭素を宣言しているのでしょう。経産省はお得意のレトリックで「電動車」という言霊を創作しています。動くために電気を利用している車という意味です。その定義でいけば、トヨタのプリウスや日産のE―powerも「電動車」のカテゴリーとなります。

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SSスタッフがガソリン車と認識している車が、実は、電動車ということです。この解釈が国際的にいつまで通用するか分かりませんが。なにしろ、アジアの国が優位になれば、F‐1レースのエンジン基準やフィギアスケートのルールを平気で変更するのが欧州ですから。

面白い話としては、3%しかも実態は石油製品であるETBEを混合した「E3ガソリン」です。これをエタノールの「E10」に変更すれば脱炭素の貢献度が高まるうえに、SS経営者にとって実にありがたい事態がもたらされます。

それは燃費の悪化です。E10ガソリンを販売した途端、販売数量が前年比プラスに転じることになります。これはアルコール燃料の原理原則です。

「電動車」が通用する限りSS経営者は“ガソリンが無くなる!”と騒ぐ必要もないし、脱炭素を逆手に取る道もあるということです。石油業界は「E10運動」すべきではないでしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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