COCと独立経営<738>出光興産EVで思ったこと – 関 匤

18日の油業報知新聞に「出光興産がタジマモーターコーポレーションとEV共同開発」と大きく報道されています。

石油メーカーにとってEVは自己否定のように映りますが、それほど石油の将来が厳しいと元売自身が見通しているのでしょう。それでも車体のプラスチック製品や部材を自社の石化事業で内製化し、発電でソーラー事業も絡みます。

そして、系列SSはEVの販売、給電、シェアリング、アフタサービスのネットワークというビジネス展開を構想しています。

EVは、田宮の模型をマブチモーターで走らせるようなものなので、自動車メーカーでなくとも「EVメーカー」になれることを改めて認識しました。

実はCOCの会員で、出光に先駆けること20年以上前にEVを自作し車両登録した方がいます。たしか、甲信越と東北で第一号登録だったと記憶します。もっとも、バッテリーのお化けみたいで、走行距離はギリギリ40㌔㍍でした。ちなみにこの方、出光からPBに“マーク替え”しています。技術力のある整備工場なら、中小企業単独でも作ることは可能です。

もちろん今の時代は、CASEとMaasのキーワードがあるので、AIの解析力とIoTで運転者とコネクトできることが大前提です。EVメーカーの主役は高度なIT技術をもつ勢力が担うでしょう。

環境・社会・企業統治に配慮している企業を選別して行なう「ESG投資」という言葉が世界中で大企業の“マイブーム”となっています。

私は地球環境問題に非を唱える気持ちは毛頭ありません(環境圧力団体は好きになれませんが…)。第一次オイルショック前の国際的な公害問題の時代を知っています。

たしかに当時、大都市の空は黒ずんでいました。その時も石油業界が“ヒール”を演じました。東京牛込柳町交差点周辺住民の血中から高い濃度の鉛が検出されて、その原因が当時の有鉛ハイオクによるものと糾弾されました。

旧丸善石油が火をつけた“Oh!モーレツガソリンブーム”は瞬殺されて、有鉛ハイオクレシオは1%程度まで激減します。(「上級国民」の政治家や官庁の車両が有鉛を使っていたと記憶しています。)

ちょうどこの時代の環境圧力団体はイコール総会屋であって、「公害企業」と名指しされたとたん“誠意を見せる”ことになりました。出光はESG投資に誠意を見せる意味もあるのでしょうが、矢継ぎ早に手を打っているように見えます。この辺りは、戦後、売る石油が無い時に色々な事業で生き抜いた遺伝子があるようです。

EVは単なる電動自動車ではなく、ガソリン車も含めてCASEの世界にあります。最も身近にあるのが「C」です。SNSなどすでにスマホ、PCで様々にコネクトしています。

また、ホンダレジェンドの新車は「自動運転レベル3」です。高速道路上はハンドルを放して、テレビやスマホを観たり、助手席のカノジョとピザでも食べながら延々とだべり合うこともできます。

CASEの覇権を握ろうとするのがGAFAと呼ばれるグーグルやアップルなど四社です。

半可通の私ですが、GAFAのビジネスモデルは系列のような垂直統合ではありません。ネットフリックスとアマゾンプライムが映画・ドラマ検索の利便性を競うように「消費者直結の顧客満足」をいわばミッション(使命)としています。

必要な技術やサービスは、下手な内製化をするよりもシリコンバレーで有為な企業にM&Aをかけながら、タテではなく水平展開で速やかに変化対応し、「消費者の使い勝手第一」を磨き上げてきた、と見ています。

石油関連業界は、2030年に向けてどう変わっていくのでしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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