COCと独立経営<744>サブスク研修で考えたこと – 関 匤

油業報知新聞で報じていただきましたが、とにかく色んなことを知っておこうとZOOM研修会を行っております。

COC会員のリクエストでフリーライターの我妻弘崇氏に「サブスクリプション」について多彩な事例とともに、成功するサブスクと失敗するサブスクの要因まで語っていただきました。

SS業界でも関心が高まっており、洗車のサブスクが登場しています。自動車でもトヨタのKINTOやホンダのマンスリーオーナーといった新サービスが登場しています。我妻氏は「焦ってブームに乗る必要はない。商品・サービスの選択と現状の事業への影響をしっかり考えるべき」と述べました。

アパレル関係でサブスクが増加しています。低額で好みの女性服を3着レンタルといったものです。

我妻氏はAOKIの失敗事例を紹介しました。月7800円でスタイリストが個々人にコーディネートしたスーツ、ネクタイ、シャツが届くというものです。スーツ離れの若いサラリーマン世代をターゲットにしていました。ところが殺到したのが40代以上の人たちでした。この世代はAOKIの中心顧客層であり店舗販売で貢献しています。

新規需要を見込んだ若年層に響かず、店舗販売の中心客層が安いサブスクに移動したことで、収益悪化を招きました。当初は画期的と評されましたが、半年で撤退せざるを得なくなりました。

主力商品をサブスク化したのが大きな失敗要因でした。AOKIのアイテムに無いカテゴリーの衣料なら成功したかもしれません。

我妻氏は洗車サブスクに関して、地域性の違いもあるが顧客にとって魅力的ではある。ただし従来のヘビーユーザーがサブスクに移行すると、定額払い分以上のメリットを求めて来店頻度が増える。手洗い洗車をやっていると、SSスタッフにしわ寄せが来ない配慮が必要ではないかと述べました。売り手と買い手、そして顧客接点に立ち人が「三方良し」という視点で設計すべきとしています。

ただ、セルフ洗車の場合は「限界コスト」的な稼働率の考え方が出来るので、月額設定次第で面白いかもしれません。この場合、土日の集中を考えれば、洗車機の台数も必要になるでしょう。

日本はサブスクでは後進国だそうです。世界の様々なサブスクが紹介された中で、さすがと思ったのが中国です。コロナで利用客が激減した航空会社が月額5万円で国内乗り放題をやりました。

そして、これは怖いなと思ったのがEVです。車体ではなくバッテリーをサブスクにしています。

コストの3-5割を占めるバッテリーの償却(サブスク)を顧客に持たせて、車両は政府補助金と独自値引きで販売するという仕組みです。700万円超の最上級車種だと150万円の値引きになります。よく考えれば、バッテリー込みの価格で値引きしてバッテリー代を顧客に持たせるというあざとさもありますが。

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西洋占星術で産業革命から200年続いた「土の星座」が、2020年から「風の星座」に変わったそうです。土=所有の時代、風=非所有の時代へ巨大なパラダイムシフトが起こっている、ということがマーケティングの世界で語られています。

すでにカーシェアリングやSSレンタカーなど自動車非保有者(風)サービスが市場で顕在化しています。サブスクエンタメ配信のNetflixは、世界的なコロナ巣ごもりで新規会員を大幅に増やし、20年第1四半期だけで1600万人も増加しました。車もDVDも持つ必要のない風の時代が扉をあけているのは間違いありません。

考えたのはSSが典型的な「土」であることです。中小企業には過大な資産を抱えています。ビジネスモデルは百年前にほぼ完成しています。風がキーワードであるとすれば、SSは旧来の商品やサービスと違ったカテゴリーの開発がテーマとなります。AOKIの轍を踏まないためにも。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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