COCと独立経営<750> 劇的な環境変化で出光中計見直し – 関 匤

出光興産が「中期経営計画」を見直しました。

最初公表された時に、2050年までのロードマップをシナリオ1から4に分けて、それぞれ脱炭素化の勢いに応じて事業環境を「にわか雨」、「むら雲」、「碧天」と天候変化で表現しました。分かりやすい環境認識図と思いました。

当初の環境認識はシナリオ3の虹でしたが、今回は晴れた青空の碧天にシフトを上げました。晴天になるほど脱炭素化=クリーンへの勢いが強まり、虹シナリオで想定した以上の速度でアジア太平洋地域の石油需要がピークアウトするという認識への大転換です。「劇的な需要減少」と明記しています。

概略、同社ニュースリリースにこうあります。

「新型コロナウイルスの感染拡大と日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言により脱炭素化の動きが加速し、中長期戦略の再構築と打ち手のスピードアップを図る。変数が多く極めて不透明な将来見通しだが世界的な脱炭素化及び高齢化のトレンドは確実に進展することを確認した」

劇的な経営環境変化に適応すべく、企業変革のギアを上げるということです。

2030年までの今後10年の基本方針として、「ROIC経営の実践」、「ビジネスプラットフォームの進化」、「Open・Flat・Agileな企業風土醸成」の3つを掲げます。

ここでROIC(ロイク)という指標が採用されています。企業の財務分析には様々な(頭が痛くなる)指標があります。私でも知っているのは、総資産で幾らの当期純利益を稼ぎ出しているかのROA、純資産に対しての当期純利益という投資家の配当目論見に使うROEがあります。

対してROICは、分子に「当期純利益」と「支払利息」を、分母には「純資産」と「有利子負債」を置きます。分母に有利子負債を入れるROICの採用が大きな意味を持ちます。投資家と債権者から調達した資金がどれだけ利益を生んでいるかという指標ですから、今後、事業資産の見直しが行われるはずです。

石油会社の場合、最大の固定資産である製油所が焦点となるでしょう。出光は東亜石油のTOBが不成立となりました。

雑誌記事によると、東亜買収後にトッパーを廃止して、パイプラインでENEOS川崎の残渣油を東亜で処理する計画だったとあります。併せてENEOS根岸の廃止というシナリオとも書かれていました。

となれば直轄製油所の閉鎖という動きになるでしょう。シナリオ4の「劇的な需要減少」ですから。改定中計には「投資判断にはICPを採用」とあります。炭素排出量を値付けする考え方です。排出量が大きい設備投資にはICPのコストが上がるので慎重になります。製油所だけでなく同社の石炭事業にも影響しそうです。

長々と書きましたが、一事が万事、元売会社は業態転換を加速します。系列関係は激変するでしょう。2030年には、SS経営者と担当者がゴルフで遊ぶという姿は昔話になっているでしょう。

出光はSSを「スマートよろずやコンセプト」と位置付けました。

「地域固有の課題を解決するエコシステム」、「様々なサービスを必要な時、場所へ提供」、「場所×リアル接点 × エネルギー×デジタルによるOMO型(オンライン・オフライン)プラットフォームを提供」とあります。これも頭が痛くなりますが、明らかなことはAIと高度なIoTが絡むので中小企業単独では不可能なことです。

欧州の系列店のようにCA(コミッションエージェント)を前提にしないと成立しません。改定中計には系列政策も含めて「碧天シナリオ」に向かうという強い意志を感じます。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206