COCと独立経営<752> 自由化時のCOC会報を発掘 – 関 匤

ある部外者の方から思わぬ「贈り物」が届きました。「昔、COCを創設した山口武男さんが勝手に送り付けてきたのだが、やたら面白かったので保存していた」と1996年前後のCOC会報を届けてくれました。

私が関わるかなり以前のもので、私も戴いていましたがずさんな管理で散逸しました。COCが昨年度30周年だったので探していたのですが、古手の会員にも保存がなく諦めていました。ごく一部とはいえ嬉しい限りです。

この時代、パソコンは大企業や若年層から普及し始めていましたが、一般的には「ワープロ」が主流でした。

山口さんはワープロで打った文章を切り貼りして新聞風にレイアウトし、紙焼きした写真を入れてカラーコピーして配付していました。時には手書きのイラストが入っていましたが、そのヘタウマながら強烈なメッセージに笑ったものです。

記事は独立経営への賛辞と、資源エネ庁、元売、全石連への大批判でした。COC以外の系列店との付き合いも深かったようで、元売や石商に関する内部情報の暴露も行っています。アナログの時代に孤軍奮闘で制作していたのだから、頭が下がります。

誹謗中傷するような会報を当の資源エネ庁にも送りつけていました。当時付き合いのあった通産官僚は意外にも、「あの会報は面白い」と言っていました。どうも、全石連に対して一物あったようで、全石連幹部をこき下ろす山口節を気に入っていました。本音ではいろいろあったようです。

“発掘された会報”は自由化前後とあって、激しく動き出した業界の姿を伝えてくれます。世の中の関心が高かったのか、朝や夜の報道番組で石油自由化が全国ネットで特集されています。思い出したのは、ガソリン価格についてマイクを向けられたSS経営者が「組合から何も言ってこないから」と答えた時はずっこけました。

◇   ◇

自由化とは国際化であって、日本の石油価格体系が逆転することを意味しました。第1次石油危機時の緊急対応がそのまま維持されて、ガソリン高・中間品安の異常な体系が4半世紀も支配しました。1996年4月1日に一斉に変われなければ業界は大混乱します。

会報は、自由化前年1995年冬季の灯油不足に激しい怒りをぶつけています。ガソリンが安売り競争しているのに、元売が灯油出荷を絞ったということです。

価格体系の逆転に業界が対応できないと資源エネ庁が元売を指導して、灯油=中間品を高値誘導する“地ならし”をしたというのが山口さんの見立てです。人為的にガソリン安・中間品高市場を作ろうとしたのでしょう。さらに日石と出光が協調して「新価格体系」を作って、96年4月へ突入しました。

◇   ◇

山口さんの怒りは資源エネ庁幹部の発言です。1996年4月4日油業報知新聞信越版を引用して、幹部が新潟市の業界講演で語ったことを列記します。概略、「輸入をもくろむ商社が儲からない形にすることが大切だ」、「余分に生産しないことを昨秋からやっている」、「ホームセンターに安値灯油を出荷した元売はとんでもない」、「委託精製を含めて商社への卸値を全部調べる」、「プロ(元売)に任せろ」…。今ならネットで大炎上する発言です。

山口さんの霞ヶ関に対する怒りの矛先は、当時資源エネ庁長官のSS表彰制度に向かいます。某表彰店が、当時大きかった元売のハイオク数量インセンティブを悪用して、法人客にハイオクを給油してレギュラーで請求して差損分を水増し請求して元を取り、ハイオクインセンティブを貰っていた事件です。刑事事件になっています。

ハイオクレシオが70%になっても何の疑いも持たない元売と、こんなSSを表彰する資源エネ庁はナニ?と疑問を呈していました。

私が残念に思うのは、石油業界で正面からの批判精神はCOCという限られたコミュニティでしか存在しなかったことです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206