COCと独立経営<754> 固定費のゼロベースの見直し – 関 匤

日本経済新聞にこんな記事がありました。

「埼玉県を地盤とする中古ゴルフ用品販売のゴルフ・ドゥは、カフェや室内で楽しめるシミュレーションゴルフを備えた新業態の店舗を今後5年間で10店舗出店する。世界的な脱炭素の潮流で石油需要が減り、ガソリンスタンドの事業撤退が相次ぐなか、その跡地を活用してオーナーにフランチャイズ加盟を提案する。」

車を運転しておれば分かりますが、廃止SSを活用した店舗を数多くみかけます。皮肉なことに、廃止SSが他業態で繁盛店になっているものもあります。

上記記事の中で、強靭に作られたSS躯体を活用する旨があります。私の方で加えれば、SS店舗の魅力はキャノピーと敷地面積です。キャノピーは雨天の客数を歩留まりさせます。SSでは小型でも、計量機を外すとまとまった駐車スペースになります。郊外のラーメン店がよく活用しており、チェーン店の天下一品ラーメンは積極的に廃止SSを探しているように思えます。SS経営者にとっては、あまり愉快な話ではないでしょう。

石油業界が大嫌いなコストコも1号店は廃止施設の活用です。閉鎖された飛行場で格納庫を再利用したのが始まりです。

スペースと躯体が確保されれば、出店費用が大幅に圧縮でします。社会が成熟の度を加える時代ですから、「あるものを利用して別のものに変える」という傾向が強まるでしょう。

COCのZOOM研修会で、某講師から「SSは固定費をゼロベースで見直すべき」と提言されました。

SSは固定費の固まりといって過言ではありません。せっかく投資しながら固定費をまかないきれず、他業態に買い叩かれて(貸して)安く使われるのは残念なことです。

SSは小売業であるのですが、「売り場面積」という概念はあまり語られません。しかし現実には、①給油、②洗車、③ピット室、④セールスルームという売場が存在しています。それぞれに給油・洗車・作業動線が存在して、おおまかにでも利用スペースが分かります。

そのスペースに対して、設備投資・人件費・管理費用など投下資本と利回りがあります。

スーパーやコンビニでは重要な考え方になっていて、売場面積や商品の改廃を判断する材料としています。

私は常々思うのですが、日本のSSは初期のポータブルに代表される数十坪の敷地から始まりました。来店時にオイル補充、クーラント液補充など給油周りで売上げが立ちました。その後、SSが大型化してガソリン売上高の比重が拡大するとともに、SS全体で売上げを考えるポータブル時代の原体験がそのまま維持されたと思います。

しかし、セールスルームが利益を生まない場所であり続けてよいはずがありません。車検・車販に熱心に取り組むSSでは商談スペースとして利益を生む場所にしています。しかしながら、まだ少数です。

研修会の「ゼロベースで見直す」では、セールスルームを美容室にする事例が紹介されました。業界成功店の売上げをあげています。しかも、市況に左右されずキャンペーンも不要です。固定客が付くので安定した利益をもたらします。このSSは軒先を使わせるどころか、他業態の収益を自らのものとしています。利益を生まない固定だけの場所をプロフィットセンター化する考え方は非常に参考になります。

2020年度のガソリン販売量はピーク時に比べて30%減少です。これは市場縮小と言い換えることができます。売り上げの図体は大きいけれど市況頼みの商品に理屈をつける暇があれば、独立系SSは固定のゼロベースの見直しに邁進すべしです。でなければ、ゴルフショップになる運命が待ち受けています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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