COCと独立経営<756> 「ガソリン巣ごもり」よりも商品作り -関 匤

最近のSS業界がマーケティング面で思考停止になっているような感を受けます。業界紙を眺めても、脱炭素政策に対して石油の評価とSS網の維持を訴える業界関係者の政治的発言ばかりが目立っています。
店舗を持った小売りサービス業として、何をどうしていくかという、働く人にとって建設的な話題が少ないように思います。
昨年は「コロナ相場」で激しく減販したもののそれを補って余りある利益を得ました。それによって、思考が「給油所」に戻ってしまったのではないでしょうか。
今春以降、ガソリン需要は前年を超えています。ただし、前年が異常だった反動であり、一昨年と比較する必要があります。4月の石連・都道府県別ガソリンは前年比117%ですが、一昨年比では91%です。ガソリン客はなお減少基調を続けています。
SSの伝統的なアフターマーケット商品は、給油と連動する傾向があります。キャンペーンで売るオイル、バッテリー、タイヤは「来店台数×声掛け率×成約率」ですから、カギを握る給油来店台数の減少は油外収益を左右しているでしょう。洗車も同様です。
2005年をピークにずっと減販基調が15年以上続いて、ガソリン市場縮小は共通認識になっています。そんな時に給油所に“巣ごもり”しているのはいかがなものでしょうか。給油客が減るならば、店舗として来店客を増やすという大テーマが存在しているはずです。だから、中小小売業者が語るべきは政治ではなくマーケティングです。
脱炭素が喫緊の課題となるのはESG経営に直面する元売であって、SS経営者ではありません。EVと騒ぐけれど、私がEVを目にするのはヤクルトおばさんがコムスを走らせる姿だけです。
COCで熱心に取り組む人が増えているのですが、アフターマーケット商品には車販という利益性の高い商品があります。経営者の知恵次第で「我が社の商品」を作ることができます。車検と相関する上に購入客は「帰巣本能」で、給油からメンテナンスまで固定化する傾向があります。車販とは給油固定客を増やすことになります。
教育して体制固めができれば、SSスタッフは声かけ油外よりもよほど仕事にやりがいと面白みを持つことでしょう。
また、COCのZOOM研修会で消防法緩和を捉えて、野菜直売やキッチンカーに場所貸しするSSが出現しています。これは直接的な利益よりも、給油目的ではない新規来店を促す効果があります。地味ですが、続けるうちにSSを認知する人が着実に増えます。
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SSのマーケティングは“ガソリンありき”から始まってきました。「油外パーリッター指標」や「V指数」など、ガソリン粗利が低くても耐えられる=数量を売れるSSが優秀とされました。ガソリン数量が全てを癒してくれたわけです。
しかし、ガソリンが縮小するならマーケティングの方向は変わります。何で集客するのか、利益をどう作るかです。これは普通の小売業では当たり前のテーマですが、SSが本気で向き合う時に来ています。と偉そうに言うほど、私が何らかの「解」を持っているわけではありませんが。
米国のSSはイコールコンビニです。2020年のガソリン売上げと店舗来店者数は大きく減少しました。店舗内では、給油客との連動性の高いセルフドリンクやファーストフードは売上げ減少した一方で、巣ごもり消費の恩恵でアルコール、タバコ、日用品がよく売れています。なによりも店舗を支えたのが、パッケージされて非接触の加工調理品でした。店舗の外で受渡しするカーブサイドピックアップのテイクアウトが増えています。結果的に客単価が高くなって、店舗売上げが前年を超えています。
ポイントは加工調理品という独自商品です。コロナを機に大手チェーンは独自商品開発に力を入れています。日本のSSは、オイル、タイヤ、バッテリー、洗車といった「コモディティ」ではなく、「商品に向き合うこと」で新しいお客を増やすことがキーワードとなるでしょう。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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