COCと独立経営<758> 給油よりも店舗としての集客 – 関 匤

石連統計で、今年3月以降5月までガソリン販売量は前年比100を超えています。3月は1%増、4月は17%増、5月は14%増です。
言うまでもなく、前年が新型コロナパニックで激減していたことによる反動戻りです。だから需要が戻ったと喜ぶことはできません。
冒頭の数字を一昨年同期と比較すると、3月▲7.4%、4月▲9.4%、5月▲11.3%です。ガソリン市場はさらに縮小しています。
私は「1998年」という年が、ガソリンにとってシンボリックな時であったと考えています。
1つは自動車産業です。この年、トヨタがハイブリッド(HV)のプリウスを発売しています。これは1トヨタの話に止まらず、全メーカーの開発戦略を「エコカー」に一斉転換させました。エコカー減税もあって伸張し現在、6台に1台がHVです。
自動車のもう1つの大変化は98年に軽自動車の規格改定が行われたことです。機能と居住性が飛躍的に高まり、また、バブル崩壊時と重なって維持費の安い軽乗用車が飛躍的に増進しました。98年当時登録者に占める割合は15%でしたが、現在は35%に達しています。
つまり、実燃費で1ℓ㍑20km前後走る車がHVと軽乗用車だけで全体の5割を占めています。これに各社のコンパクトカー群を加えれば、SS顧客は燃費の良い車に置き換わったと言えます。
石油業界の大変化は、98年にセルフサービスが解禁されました。セルフを価格問題でしか考えない人が多かったのですが、消費者は「新しい給油サービス」と受け止めたはずです。満タン縛りから解放されて、数量、価格を好みのままに決められる自由度を得ました。その結果、1台当たりの給油数量は減少しています。これはCOC会員にセルフ転換前後の記録を確かめています。10ℓ前後減っています。だから全石連が「満タン運動」をするに至っています。
1998年から23年経過しています。その結果、「省燃費車×給油数量減少=来店頻度の減少」という構造的なガソリン需要減少を起こしていると考えています。
SSを小売業と考えれば(とわざわざ断るのは石油供給業と考える人がいるようなので)、来店頻度の減少は大きな問題です。ガソリンだけで考えていれば、客数を増やすしかないと値下げやティッシュ配りに粗利を削るか、ひたすら縮小均衡のスパイラルに陥るしかありません。
給油客数は減少を続けるという前提で、店舗としての集客、新しい顧客を誘引することがSSの最大のテーマではないでしょうか?米国のSSがコンビニなのは、オイル、洗車など従来型油外が飽和状態になったことが要因でした。彼らは従来型油外を捨ててコンビニにスピンアウトしました。市況に左右されない安定収益を得たこと、セブンイレブンなど有力チェーンのFCになることで一SS店が維持されました。全米SSの六割が一SS店です。
石油業界は1990年前後にSS業態革新に取り組んだことがあります。しかし、何一つモノに出来ないままでした。失敗の検証すらまともに行われていません。
しかし、往時に比べてSS敷地は広くなり、セルフが登場し、DXと呼ばれるIT技術による顧客サービスが中小企業にも波及し始めています。現実に、かつて軒並み失敗したコンビニもセルフSSと相性が良いようです。
FCや元売のお仕着せに頼らなくとも、独自に給油以外の集客軸を模索し徐々に効果を上げるSSも現れています。理想としては粗利の8割を給油以外で維持するビジネスモデルの確立です。考えてみれば、ガソリンは経営者の知恵と努力よりも市況任せ、景気や天候任せです。新たな集客軸や利益軸づくりは、経営者の力量が発揮される世界です。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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