COCと独立経営<759> レクサス不正車検で整備DXが加速? – 関 匤

不正車検で大きなニュースが出ました。
「トヨタ自動車は7月20日、全額出資の販売子会社、トヨタモビリティ東京が運営する『レクサス高輪』で不正な車検があったと発表した。パーキングブレーキの効きや排ガスの成分など五項目で必要な検査をしなかったり、数値を書き換えたりしていた。対象台数は五六五台。トヨタは無償で再検査する」(日本経済新聞)
「565台」は、車検でかなり頑張っているSSの半年分です。トヨタは水素自動車のミライ(未来)を語る以前に今そこにいる顧客をしっかりと見つめるべきでしょう。顧客の信頼なしにトヨタの未来はありません。
不正車検というと、稀代の盗賊・石川五右衛門の有名な辞世の句を思い出します。「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」。浜の真砂のごとく、不正車検の種は尽きないのです。トヨタは氷山の一角にすぎません。
国交省は不正車検処分者のネガティブリストを公表しています。私は2014年からリストを作っております。整備を行うCOC会員に「整備の信用」を啓蒙する目的です。
リストには、トヨタやマツダの正規ディーラー、テレビCMを流す有名カーショップや自動車販売業者の名前が少なからず現れます。残念ながら石油関連業者も参戦しています。これじゃ「系列指導」は無理ですね。「反面教師」にはなりますが。
今回不正が発覚したトヨタモビリティ東京は不正の背景として、「増加する仕事の量に対してエンジニアの人員や設備の状況が追いついておらず、慢性的に負荷の高い状況が続いていた。決められた時間内に作業を仕上げることを最優先にしてしまっていた」(日経紙)と説明しています。
レクサスには「ケアメンテナンスプログラム」があります。購入から3年間、12カ月点検2回を含んで6回の無料点検メンテナンスサービスです。店舗が東京高輪店ですが、セレブが多い場所なのでレクサスのドル箱店であったと想像されます。都内で走行距離は短くても、体面にこだわるセレブゆえに無料点検利用率は高いと想像されます。
営業は顧客にいい顔ができますが、整備サービス部門の作業を増やすことになります。社内で部門間対立があったのかなと想像します。というのはトヨタモビリティ東京は、トヨタのチャネル統合の先鞭を切った会社です。トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツの4系統が1つになりました。チャネル間競合が無くなって売上げ増が期待できる反面、取り扱い車種が倍増して混乱しているという記事も出ています。恐らく各部門で古巣の意識が抜けないうちに、整備では取扱い車種が増加して新車種受け入れ時の技能に温度差が生じていた可能性があります。
だから同社の説明にあるように「仕上げを優先してしまった」のでしょう。トヨタに限らず国交省ネガティブの処分工場が絶えないのは、やはり経営陣に台数へのこだわりが強く、それが悪いカタチで現場に反映しているからでしょう。
ヘタを打ったトヨタですが、DXによる先端的な整備システムを開発しています。マイクロソフトが開発したAIのMR(複合現実)に整備プログラミングした「ホロレンズ」です。レンズを装着すると、3Dで現車の箇所ごとに整備点検手順が指示されます。指示書やマニュアルなしに作業と確認ができるので、作業時間が3分の1に縮小されるそうです。すでにGRGarage業態店に実践導入されています。
チャネル統合しても旧カローラ店のスタッフがヤリスを難なく整備点検できて現場を混乱させないことが開発の原点だったと思います。トヨタモビリティ東京の事件を機に、トヨタは一気に「整備のDX」を加速すると思われます。車検整備の品質とサービスが新たな段階に入りそうです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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