COCと独立経営<762> スピンアウト – 関 匤

5年ほど前のCOC研修会で小嶌正稔教授(桃山学院大学)が米国SSの変遷を説明する際に、「SS機能と人材がスピンアウトした」という表現を使いました。

何を語っていたかというと、1960年まで日米のSS業態に大差がなくフルサービス給油と軽整備、カー用品販売、洗車など油外販売を行っていました。しかし、米国の好景気と流通産業の業態革新とすそ野拡大で、小売業が人材不足になりました。また、SS業界は過当競争となって油外販売が飽和状態となりスタッフの所得も上がらなくなりました。

その時に、SSのサービス機能であったオイル販売が人材とともにスピンアウトして専門店のクイックルブとなり、洗車サービスも同様に専門のカーウォッシュ店となってそれぞれ急拡大しました。

そしてセブンイレブンなどコンビニ業者がガソリンを安売りして、ガソリンまでスピンアウトしかねない状況となって、石油業界はセルフ+コンビニ業態に転換していった、とそんなお話でした。

この話を聞いてから、私が物事を考えるキーワードとして「スピンアウト」がインプットされました。

私は日本市場も同時期に同じ状況に直面していたのではないかと考えます。

1975年頃になぜカーショップが誕生したのか、ホームセンターがオイルの量販を行えたのか。当時のSSの機能が飽和状態になっていたのではないでしょうか。

ローンや中古車市場の拡大を背景に、団塊の世代が一斉に車に乗り始めて、SS顧客層に個人客が急増しました。SSは法人掛け売り主体の時代で、週末の個人客対応に温度差が生じていたと考えられます。また当時の規模による物理的な処理能力に問題があったと思います。

旧日本石油は毎年、「オーナードライバーの意識調査」をこの時代から90年代央まで行っていました。日石内に個人客対応が重要課題となっていたと想像されます。古いデータを見たら、1975年のオイル市場でSSは七割強のシェアでした。しかし、10年後には4割台に後退しています。3割強がSS以外にスピンアウトしたことになります。現状はもっと低いことでしょう。

オートバックスが1号店から15年で、イエローハットが20年で上場できたのも、個人客をSSからスピンアウトさせたことが大きいでしょう。残念なのはこの間に、SSアフターマーケットに新業態が育たなかったことです。

16日の油業報知新聞東北版で山形県T社が1000坪の洗車パーク(専門業態)オープンと大きく報じられていました。同社はサブ店からPB転換して、大型投資のセルフ新設で既存SSと併せてガソリン拡販戦略を邁進しました。東日本震災後から基地・物流体制整備に投資して中間品の直売を広げています。

石油特化型戦略かと思っていたら、SSで洗車コーティングを始めて、作業環境のよい専門ブースに投資しています。手応えを実感したのでしょう、大型洗車パークへの投資です。

この流れを見ると、米国で洗車機能がカーウォッシュ専門店にスピンアウトした歴史がオーバーラップします。これは想像ですが、SS店舗の制約や処理能力の壁を突破したかったのではないでしょうか。

SSの業態を変える必要性は広がりつつあるようです。それは、道路運行車両法改正時の車検のように、他業態から機能をSSにスピンアウトさせることを意味します。T社の記述で「投資」という言葉を何度も使いました。車検のスピンアウトも、しっかりと事業にできた会社はそれだけの投資を行っています。

そして、意識として「ガソリン屋」から脱却すべきです。セルフ解禁以降、給油機能は簡単にスピンアウトしていますから。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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