COCと独立経営<563>ガソリンは目的でなく手段-関 匤

今や業界枕詞となりましたが、石油需要の縮小とガソリン粗利益の停滞が構造化しており、企業存続を図る経営者は今後の収益軸をどこに置くかを必ず考えているはずです。

系列SSの25%が元売社有物件です。七五%が販売業者所有SSです。元売戦略の先鋭部隊や出資店を差し引いて、50%前後が資産的には自由な立ち位置にあると想像されます。この人達の多くは、「ガソリン市場」において楽ではない状況にあると思います。元売再編で商社向け出荷管理体制に入ったことで、非系列(PB)も往年のように安売りで市場をリードする会社が少なくなりました。

一方、冒頭の環境下において、“ガソリン弱者”であることが、むしろ経営リスクを軽減し「小売業」としての機動性を生かしやすい状況にあると思います。シェア50%や30%の元売が出来てしまうことで、ガソリンを唯一のメシの種とするだけに何をしでかすか分かりません。元売の下流で大きなガソリンボリュームを抱えることは、火薬庫にいるに等しいものです。

そして抱える量が多いほど、減販の実害も大きくなります。量を維持しようとすれば確実に利益の面積が縮小します。ほんらいメーカーの対岸にいる小売業者が、コモディティを抱えることが最大の経営リスクであり、存続するには元売と一蓮托生を覚悟する必要があります。

そんなことは皆様お分かりと思いますが、業界世論を眺めていると実際には頭の中の八割をガソリンが支配しているのではないかと考えてしまいます。もちろん、SSの業態転換や新規事業軸の立ち上げは多大な困難を伴います。それより、現状を維持する方が楽かもしれません。

ところで、COC会員の企業沿革を見ると、親子伝来の事業を継承した人はむしろ少数派です。米の集荷業者、肥料小売、漁業・海運、喫茶店、電気工事、銀行員、自動車販売、鉄鋼問屋、測量技師、メーカーサラリーマン…。本籍地は石油と無関係な場所にあります。そこから事業転換しているわけです。また、SS業を継承した場合もマーク替えや非系列化の経営転換を経験しています。

前にも書きましたが、HCのコメリやケーヨーD2もSSからの事業転換です。両社が転換した40年前は、日本の商業転換期であり商店街の業種店からCVS、酒販や家電量販店、外食店等々の業態店が主導権を奪っていった時代でした。SSもセルフや油外の革新など業態転換のテーマを持っていましたが、残念ながら揮発油販売業法という「ガソリンで縛る法律」によって業態進化が封印されてしまいました。

その結果、系列・非系列ともにまだガソリン事大主義の意識から抜け出られないようです。明言できるのは、元売は彼らの中間利益を確保はしても小売経営者の収益戦略を描くことはありません。その意味で、ガソリン弱者店がガソリンを目的ではなく、手段に利用しながら新しい経営モデルを確立することに期待しています。ガソリンの多寡で経営を評価する時代ではないと思います。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206