COCと独立経営<584>地方活性化とSS事業活性化 – 関 匤

上念司さんという経済評論家がいらっしゃいます。多数の書籍とテレビ出演があるので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。

7年前に著書を読んで面白かったので、COCの新年研修会で経済講演をお願いしました。きわめて分かりやすく、かつ軽妙洒脱な言い回しと炸裂するマシンガントークが好評で、以降、年に一度は講師にお呼びしています。

デフレが日本社会の元凶であり、それを作り出すA級戦犯の日本銀行総裁を更迭して、金融緩和すべきと主唱していました。国会による参考人招致でも、臆せず堂々と持論を述べています。YouTubeに動画があるので興味があればご覧ください。上念さんの考えは、アベノミクスで証明されました。

数年前から、「地方経済」について、世の中の学識経験者の常識を論破しています。「地方消滅論」などない、地方再生の方法論が間違っているということです。

紹介が長くなりましたが、某COC会員が市長から地方活性化の勉強会で講師を誰にするか打診されて、上念さんを推薦しました。実は、上念さんの話は地方公務員や議員にとって決して耳触りの良いものではないのですが、講演会が実現しました。市職員と議員を含めて300人の聴衆が集まり、私も参加しました。

上念さんはいきなり、補助金制度が地方を不活性化させていると喝破しました。

自治体を貧乏にする元凶が補助金という麻薬だそうです。青森や甲府で補助金をふんだんに使った中心市街地活性化が、今や墓標と化している背筋が凍りつくような実例を説明しました。

「どうせ人の金、補助金コンサルの暗躍もあって不要な実費を膨らませてしまう。無責任で商売の分からない人が音頭を取っているから」です。青森では駅前の廃墟に市役所を移転せざるを得ない事態に至っています。市長や議員がいる前で「この街も駅前ロータリーが墓標になっている!」という指摘には、一般聴衆から拍手が起こりました。

ちなみに青森は竣工当時、経産省が「活性化モデル事例」として表彰しています。

上念さんの話に説得力があるのは、本人が報酬の九割を講演・執筆以外の実業で得ている商売人の実感が反映されているからです。上念さんはこういいました。「ここにいる300人がラーメン店を開業してください。多くは失敗するが、少数でも必ず行列の出来る店が出来る。それが活性化」。つまり、駅前の箱もの一つではなく、多くの人がチャレンジできればおのずと活性化の突破口が開けるということです。「金持ち自治体はお金を出して資産を買い、お金を産む資産をたくさん持っている。貧乏自治体はお金を出して負債を買い、お金を食う負債をたくさん持っている」そうです。

長くなりましたが、地域をSS事業に置き換えれば、活性化のヒントが得られます。

まず、補助金です。石油業法施行以来、半世紀以上にわたって巨額の補助金が元売と販売業界に注ぎ込まれてきました。その結果、SSの墓標が出現しています。

そしてチャレンジです。業界の歴史は、成長志向を異物として排除してきました。チャレンジしようにも、ガソリンのさまざまな縛りが鉄条網のように絡みつきます。海上取引の不活性化やPB向けの「届け先証明」はチャレンジャーの足を引っ張る元凶です。その上に商売に無関心で補助金予算にだけ関心のある役人が居座っています。

SS事業の活性化は地方再生より難しいなと感じた次第です。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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