COCと独立経営<591>「アジア展開」はどうなったのか?- 関 匤

BPのエネルギー統計によると、2006年から2016年のアジア大洋州の石油消費は年率3・0%ずつ増加しており、06六年比で133・5%の増加です。アジアを除く世界は103%ですから、あらためてアジア地域の需要拡大を実感します。

06年に29%だったアジアのシェアは、16年に35%と大きく台頭しています。この数字は、10年間にアジアで日本国が2つ出現したことを意味します。

石油メジャーの世界では、ブリティッシュガス買収に8兆円の巨費を投じたRDシェルが昭和シェル石油を売却するなど、既存石油資源売却に動いています。ガス資源で火力電源を確保できるので、欧州ではEVを視野に入れた流通市場戦略に動いています。

一方、冒頭データの出所BPは、メキシコ湾流出事故から立ち直り、積極的な投資戦略です。需要旺盛なアジアに布石を打っており、SSでは豪州、インドネシア、インドで買収と出店に動いています。豪州では大手流通のウールワースのSS550カ所を570億円で、インドネシアでも350億円を投じてSS網を拡充しています。

メキシコでは、国営企業一社体制が緩和されて、BPとエクソンモービルがSS出店を加速させています。伸びる市場で手持ちの資源を背景に、燃料油から潤滑油まで大きく稼ぐ動きです。

日本の元売は、まだ未稼働のようですが出光がベトナムで製油所を完成させ、豪州とカリフォルニア州で大手ジョバーを経営しています。JXTGでは旧東燃が豪州大手港湾物流業者と合弁しており、ベトナムには製油所建設を表明しています。しかし現段階では、「豪州で燃料輸入ターミナルの建設を検討中」、「 製油所新設で具体的な共同検討を行う覚書を締結」に止まっています。その他の元売も大胆にアジアで商圏拡大するような事業は見当たりません。

先のBP統計で、ほぼ横ばいの台湾を除くとアジアで日本は唯一年率2%ずつ市場が縮小しています。日本を除くとアジアの伸び率は150%近く、年率でも約5%という成長市場です。

世界で稼ぐ日本の産業界にあって、成長市場に打って出ないのは石油業界だけでしょう。東大阪の中小ネジ工場も、海外工場を持ち世界に製品を売っているのですから。

「(元売は)新たな成長機会を確保する観点から、アジア等の成長市場等への海外展開に関する積極的な検討を行っている」と資源エネルギー庁報告書は書きますが、すでにメジャーは「検討」どころか商売を始めています。輸出も海外展開ですが、これは韓国がすでに20年前からやっているビジネスモデルの後追いに過ぎません。

元売が本格参入する頃には海外勢がシェアを確立するか市場が成熟していて、今度はアジアで直営セルフの安売りをしでかして国際バッシングを受けるかもしれません。

小売流通業者も、今後はアジア市場展開の可能性くらいは検討する必要があります。日本の店舗管理とサービスレベルは高い筈ですから、競争で鍛えたノウハウが生きる道もあります。そのためにも供給、物流整備といったインフラは大企業の責務となります。

何兆円も売上げる図体のでかい会社が、国内配給会社で安住していて良い筈がありません。

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