COCと独立経営<592> 経営論と業界論 – 関 匤

新しい年が明けました。

私事ながら、年末に嬉しいことがありました。COC会員でもないSS経営者から励ましのお手紙を戴きました。私ごときの拙文に、ありがたいことです。

さて、歴史的、時系列に物事を見ると、日本のSS業態は先進国でもっとも“混乱”していると思われます。元売系列ではチェーン店の統一感がありません。また、元売が「戦略」と称するものが、消費者接点で実行されているのか、どのような方法論が系列内で共有化されているのか、全く見えません。昔から変わりません。

PBもPBとしてのブランド力を確立している所は少なく、昭和時代の無印とどこが違うのか分からないSSもあります。逆に、新規参入のコストコが異彩を放っています。

私が“混乱”と思うのは、実践的な経営論と業界論がブレンドされて訳が分からなくなっていることです。経営論はリアリズムの世界です。わが社のヒト・モノ・カネの資産で最大の利回りを図ることです。

そして、個々の経営者の資質や与えられた環境は異なりますから、おのずと経営の方向性、方法論も異なるはずです。SS経営では、ガソリンだけ唯一の共通商品であって、経営全体のデザインは経営者の戦略で異なるはずです。

一方、業界論は本来研究者の世界ですが、監督官庁が全体の状況判断のために行うものと理解しています。ところがそこに、ガソリン市況論とか安定供給論がSS経営者から出てくることで、業界論があたかも「尊王攘夷」のような思想に支配されがちです。

そして同業者は思想を一にすべきという「空気」が醸し出されます。協調こそ正義であり、個々の経営者が独自にチャレンジする経営改革も思想にそぐわなければ排除の論理に変わる。この繰り返しがSS業界の歴史ではなかったでしょうか。SSを利益業態化しようというリアルな話よりも、 “最後の砦”とか“サプライチェーン”というスローガンばかりが勇ましく闊歩しています。

何を言いたいかといえば、リアルな経営論よりもガソリン様を本尊とする業界論に支配された結果、本当に大きな変動に中小企業が耐えうるのか心配になっているからです。

今年以降、欧米に比して半世紀の遅れを取り戻すように、SS業態の洗い直しが始まる予感があります。

系列内では、対元売優位性を競う熾烈な「系列内競争」が展開しています。元売にとって質の良いSSをどれだけ持つかが、カギを握ると思います。ガソリン需要が依然として減少傾向を続ける中で、立地・設備から利益を最大化する競争です。

独立系・PBの応援団である私ですが、さすがに楽観していません。もともと中小企業の自己投資ですから、多くは立地・設備それにPOSシステムなどガソリン競争では元売系列の後塵を拝しています。“第二の地下タンク問題”とされるPOSのIC化投資も待ち受けています。

ただし、経営者の自助努力が通用するのが利益事業の開発です。COCでもチャレンジする人たちがいます。独立系の自由度を発揮して実現してほしい。年初の期待です。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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