COCと独立経営<597>石油もCVSも日米公取委の温度差 – 関 匤

昨年5月、セブン―イレブンが米国でスノコ社(SUNOCO)のSS(CVS)ネットワーク1100店舗買収を発表しました。

スノコは日本でもエンジンオイルでブランドが知られています。同社は20世紀初頭、SSネットワーク拡大のためにFC(フランチャイズ)制度を導入しています。物の本によると、シンガーミシンに次いで2番目のFCだそうです。スノコのFCが日本では「特約店制度」と名前を変えて現在に至ります。

冒頭の件ですが、米FTC(公取委)からクレームが付きました。全米20州、76都市でセブンが過度に集中するため「価格値上げの恐れあり」でした。最近、FTCの調停が決まりました。セブンは直営28店舗を競争者に売却、スノコは33店舗を売却せず運営継続か競争者に売却というものです(ロイター報道)。

買収額から割り出すと1店舗約3.1億円。セブンは200億円ほど余計に出費したことになります。買収店舗数の5%ほどですが、エクソンモービル誕生時の大規模な営業資産売却指示といいFTCは“公正取引”に厳しいなと実感します。

どうしてもJXTG統合時の公取委と比べてみます。直営SSや基地売却など負担ゼロでした。「過度の集中」に対する感度が日米で天と地ほども違うようです。その結果、業転が縮小し、セルフSS総数の50%以上を占める元売系列が市況是正に動いたら、きれいにガソリン価格が上がりました。これはSS業界にとって喜ぶべきことではありますが、上記のセブンに対するFTCの「価格値上がりの恐れ」が現実になったとも言えます。

CVS業界で、日本でもセブンが強く、大胆にスクラップ&ビルドで大型新店を広げています。ただしこの業界、競合するファミマやローソンもオンリーワン商品を持ちます。商品力で競っているので、店舗シェアに安住できないところがあります。

さらに、飲食は同業態だけの競争ではありません。CVSがコーヒー市場を席巻しましたが、スターバックスがオフィス向けに機器設置で対抗だそうです。コメダやルノアールのようなフルサービスで客単価が高い代わりに長時間過ごせる喫茶店も人気です。私もこの原稿をルノアールの電源を使いながら書いています。

つまりCVSなど食品市場は、1日3食+間食を巡って業種業態入り乱れての白兵戦を展開しています。容易に独占はできない市場構造です。

ひるがえってガソリンは、規制と業界慣習のベールをかぶったSS以外で買えません。ガソリンはローソンからあげクンのようなオンリーワン商品ではなく、同じ基地から出荷された同質商品であり、燃料という消耗品なので、業界人が叫ぶほど消費者は商品に思い入れがありません。

こういうコモディティ市場では、数の論理が生きます。だから小売業者がガソリンにこだわってばかりいては、系列の場合は特約店という呼称からCVS並みのFC統制に入るでしょう。

PBは縮小均衡するだけです。

FTCと公取委の判断の違いに慨嘆しますが、独立系はオンリーワン商品開発急務と感じています。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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