COCと独立経営<601>SSは小売進化のらち外にある – 関 匤

 

私はSS市場を小売業のマーケティングの視点で眺めてきました。しかし、有識者や業界団体の方々の口からは、“石油供給最後の砦”とか“サプライチェーン”といった勇壮な言葉が飛び出してきます。“進め一億火の玉だ”なんて言葉を連想してしまいます。要は政策とメーカー主導の供給論で見ているのです。

昭和20年代に外資系石油会社がせっかく「サービス・ステーション」という概念を持ち込んでくれたのに、役所、業界団体、メディアは「給油所」と呼んでいます。これ戦前の言葉ですよ。コンビニを雑貨屋と呼ぶようなものです。

この業界はマーケティング視点を忌避する力学が働いているようです。“ふつうの小売業界”と推移を比べてみると、かなり歪に見えます。

私はマーケティング専門家ではないのですが、戦後の小売業発展段階はざっと以下のようになると思います。

  • 第1段階・モノが必要な時代

1960年代。メーカー系列店の活躍。地域中小企業が店舗と人を準備して、メーカーは製品供給と宣伝活動。この両輪で全国津々浦々に製品を普及。SS、自動車、家電、ミシン、牛乳、文房具…。

  • 第2段階・モノの差別化

1970年の大阪万博戦後。メーカーが製品競争に。自動車の若年、スポーツ市場への広がり。丸善モーレツガソリン、家電の性能競争。やはり系列店が主導。

  • 第3段階・モノの選択肢の提供

大阪万博後。モノが行き渡った段階で非系列店の登場。象徴は家電量販店と総合スーパー。石油でも無印登場。商品の比較購買の選択肢を提供。

  • 第4段階・消費者目線の新業態

1980年代。郊外住宅開発と共働きなど生活者の変化に対応して、顧客接点に立つ新業態が登場し成長。コンビニ、ファーストフード、カーショップ、ホームセンター、ファミレス、居酒屋…。

  • 第5段階・業態の差別化競争

平成前後より。サービス、商品開発、システム、取引等の精度向上。製造小売り業態(ユニクロ)の出現。上場企業の出現と業態の優勝劣敗。100以上あったコンビニ本部が数社に集約。家電業界の大集約。

小売の進化形とはメーカー系列から小売業による自立業態への主導権の移行です。

この過程で中小から始まった業態が成長して、少なからぬ上場企業を生みだしています。

一方、日本の石油業界は、第2段階以降の変動の兆しを「ガソリン供給論・市況論」で封殺しました。揮発油販売業法とか標準価格設定とか弥縫策を駆使して小売りの変化から目を逸らせました。系列・非系列問わずチャレンジ精神を持つ経営者はいましたが、業界構造の中で牙を抜かれてしまいました。

今や、高度化法と元売再編の「供給の論理」が席巻して、小売りのチャレンジ精神を委縮させてしまいました。

片や、欧米の石油業界は第2、第3段階の頃からセルフSSが台頭し、新業態であったコンビニを取り込んでいきます。

フランスで成長した総合スーパーによるハイパーが、欧州各国に広がりました。

米国でも1990年代央からハイパーが成長します。21世紀になると、石油系コンビニが後退してセブン-イレブンなど流通系コンビニが市場の主役となりました。欧米も小売業の変化で語ることができます。強い小売りがメーカーのチャネル政策を転換させています。COCの渡米組によると、コンビニやハイパーのカテゴリーキラー(業態破壊者)が登場しているそうです。

石油業界は半世紀以上前から、零細業者保護を大義名分にしてきました。21世紀の今も零細店保護を口にしています。

“ふつうの小売業界”で30年前にパパママストアの減少が話題になりました。彼らはコンビニFCなどでパパママを吸収しました。SS業界で半世紀たっても、零細店の自立業態が系列政策で確立されていません。供給論・市況論で語るかぎり、零細店は予算・補助金獲得の枕詞に過ぎないということです。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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