COCと独立経営<610>配給時代の今こそ業態転換 – 関 匤

ある方が全国紙の取材を受けた際に、記者からこう言われたそうです。

「この1年、ガソリンマージン改善で販売業界も利益をあげているのだが、SS取材したSS経営者の表情が冴えない」

記者は系列店を取材しているようですが、COCのPB経営者も多くが鬱陶(うっとう)しい顔をしています。元売は好決算に沸いていますが、販売業界に閉そく感が漂っています。

昔のソ連や中共の国民もこんな感じだったのかなと思います。“生きぬよう死なぬよう”という言葉があります。企業成長してチャレンジしては困るが、倒産させてはこっちが損するから大人しくしておればよいという意味です。

系列は縦関係が強まり、PBも元売の供給管理下に置かれています。ガソリンというコモディティが、小売経営の自由度が左右するのは腹立たしいことですが、今の日本の実情です。

高度化法で精製削減(絶対量の減少)、基地を介さない製油所直送の供給の増加、余剰製品の輸出等々の供給の変化、そして需給と価格の主導権を持つシェア50%元売の登場、といった要因が石油流通の構造を変えてしまいました。

ガソリン業転については、元売が商社に対して流通経路証明を義務付けて最終届け先を把握するようになりました。この結果、系列SSへの業転流通が急激に先細りました。このため陸上基地の売り買いが不活性化して、元売はコスト積み上げ方式による価格体系を実現しています。

言い換えれば、まず元売の利益を確定して系列・非系列価格が決まる状況です。だから価格指標は、元売価格の事後報告にすぎません。仕切価格は、いわゆる“マスト(must=絶対)”であり、市況を高値誘導して結果的にSSに従前より大きい粗利益をもたらしています。

陸上基地での取引が良い意味でも悪い意味でも、需給を反映した市場価格(相場)を形成していましたが、現在は50%元売に他社も“馬に乗る”ことで「新価格体系」が維持されています。

商社の人によると、今後、系列内で特約店整理が行われていく中で、系列特約店が業転の担い手になるのでは、と悲観的な表情です。

COCのPB経営者に聞くと、供給面で問題は無いが、昨今の運転者不足で物流コストの大幅アップに直面しているケースもあります。某元売は運送会社に無印ローリーの系列マークへの塗り替えを指示しているそうです。

冒頭の記者の話に戻りますが、系列店は業転を盾にした対元売交渉ができなくなり、ネットワーク効率化で淘汰の波に呑み込まれる不安があるようです。PBは、経路証明を悪用されて供給削減の危機感を持ちます。(これは独禁法に抵触すると考えますが)

現在、イラン、サウジとイエメン、イスラエルとイラン、北朝鮮、ベネズエラなど政治リスク要因もあって、原油は高止まりしています。ゴールドマンサックスは7月に82.5㌦をつけるとレポートしています。元売主導の価格体系に追い風が吹く環境要因があります。

一方で国内ガソリン販売は2017年度も前年割れです。石連統計速報でピーク時の2004年度比84.3%と16%近く市場規模が縮小しました。EVやFCVはまだ夢物語としても、内燃機関の省エネ技術が進行しています。さらに、統計の裏付けはありませんが、需要のボリュームゾーンを占めてきた団塊の世代の運転頻度が確実に減少していると思われます。ガソリン消費では、少子化や若者の車離れよりも大きな要因と考えます。

現在の価格体系は、明らかにコモディティに必要な柔軟性・多様性を欠いています。前にも書いた戦後配給の復活です。

しかし消費変動と国外の変動要因には逆らえません。粗利の取れている今のうちに、SS経営者はガソリン仕切りに振り回されない利益業態への転換が“マスト”です。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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