vol.732『外国人労働者』

深刻な人手不足への対応のため、出入国管理法(入管法)改正案が衆院本会議で可決され、11月28日から参議院でも審議が始まった。12月10日まで開かれている今国会で成立すれば、来年4月から施行されることになる。5年間で最大34万人あまりの外国人労働者の受け入れを見込んでいるとのこと。これまで、働くことを認められていたのは医師や弁護士など17資格のみで、高い専門性を必要としない「単純労働」は、認められていなかったが、新制度では、日本語能力や仕事をするのに必要なスキルの試験を受け、合格して「特定技能」があると認められれば、就労資格を取れるようになる。つまり、正式に「労働者」として受け入れる幅が大きく広がるということ。政府・与党は、来年の統一地方選や参院選での経済界の協力を取り付けるためにも、この法案を何としてでも今国会で通したいのだという。

仮にそうなると、飲食業や建設業、農業や介護業などで外国人従業員がどんどん増えることになるのだろう。別に肌の色や国籍がどうあろうと、同じ人間なんだから怖れることなど何もないと思うのだが、長年島国で、ほぼ単一民族の社会にいたこの国の人たちが、異なる言語、文化、宗教の人々を不当に差別し摩擦が生じないか心配だという人もいる。また、相変わらず外国人を単なる「雇用の調整弁」としか考えないような雇用者が多いのではないかとの懸念もある。

最近でも、三重県亀山市のシャープの工場で、部品製造の受注増加に伴い、三次下請けの派遣会社10社が雇用した外国人労働者約3、000人が働いていたが、今年に入り、派遣会社が時給を減らしたり、雇い止めにしたりしたため、約2、000人が退職を余儀なくされ、労働組合「ユニオンみえ」が三重労働局などに告発するという事件があった。同組合は、「外国人労働者が使い捨てられやすい構造が根底にあり、問題だ」と指摘しているが、シャープは「作業員と直接雇用の関係になく、コメントする立場にない」としている。(12月1日付「讀賣新聞」より)

雇用者の意識が変らない限り、どれだけ法規制をかけてもこのような類の話は跡を絶たないだろう。外国人を“貧しい国から来た出稼ぎ労働者”とさげすんでいると、やがて社会に緊張が生じるようになる。一方、欧州では、中近東やアフリカからやってきた移民を受け入れ続けたことが、近年大きな社会問題となっている。相次ぐテロが、外国人排斥へと人々を煽り立てている。「外国人は出てゆけ」なんて、このあいだまでは声に出すのもはばかられるような状況だったのに、いまでは極右政党が各国で台頭するなど様相が一変している。“自由の国”アメリカもいまはご存知のとおり。メキシコ・ティファナに集結したあの6千人を超える難民たちはどうなるんだろう…。

GS業界も万年人手不足。時給をつり上げ、求人費を使ってもさっぱり応募者が来ない。最近では「35歳まで」なんて年齢制限をかける店は皆無で、「60歳以上大歓迎」なんて調子。それでも集まらない。外国人でも宇宙人でも、意欲のある人ならだれでもOKという切実な状況だ。恐らく、今後GSスタッフは外国人がかなりの割合を占めるだろう。マネージャー以下スタッフ全員が外国人という店も出てくるだろう。いや、GS経営者の中にも外国人が現れるかもしれない。日本にやってきて裸一貫、給油スタッフからたたき上げ、全国屈指のGSチェーンを作り上げるような立志伝が生まれたらおもしろい。

日本人の若者が“きつい、汚い、危険”などと仕事を選り好みしているうちに、ハングリー精神みなぎる外国人たちがどんどんやってきて、気がついたら仕事が無くなっていたなんてことになるのではないか。あるいは、日本の古い商慣習に捉われず、新しい発想で成功する外国人企業が次々と生まれるかもしれない。ある大学教授の調査によると、過去20年間にシリコンバレーで起業したベンチャー企業の半数以上が、移民が創業の中心メンバーになっていたとのことである。この調査結果は偶然ではなく、ベンチャー企業の成功の秘訣は、強い心と大きな野望を持った人間の存在であり、退路を断ってやってきた外国人が成功する確率は高いのだという。そうであれば、日本人よりも外国人を積極的に雇った企業の方が成長するかもしれない。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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