vol.739『将来性はあるか』

『ガソリンスタンドの倒産が、2018年は5年ぶりに増加に転じた。さらに、「休廃業・解散」企業も増加しており、厳しい経営環境を映し出している。エコカーの普及や高齢化に伴う運転者の減少、これに地方経済の低迷も加わり、ガソリン需要は落ち込み、特に地方のガソリンスタンドの経営は厳しさを増している』─2月8日付「東京商工リサーチ」。

調査の中身をもう少し詳しく見てみると、負債総額は前年比53.2%増の63億8100万円。負債10億円以上の大型倒産は1件だけだったが、1億円以上5億円未満は16件で2倍増になった。また、倒産以外で事業活動を停止したGSの件数は同36.5%増の198件にのぼり、直近5年では最多とのことだ。新たな要因が発生したわけではなく、相変わらず、「少子高齢化」、「省エネ化」、「規制強化」の3点セットによるものと結論付けているが、バカな安売り競争を続けて自ら疲弊している現状についての言及はない。一番の問題はそこにあると思うのだが…。

もういい加減に価格競争をやめないと、我々は滅亡してしまうだろう。そんな危惧をこの数年ずっと抱いているが、GS業界人なら知らぬ者のないネット掲示板「ST31」に、最近“我が意を得たり”と思わせるようなコメントがあったのでご紹介しよう。

「トーナメント戦を勝って勝って勝ち抜いて、気がついたら周り(日本中)に同業者が一軒も無くなることが究極の快感ですか? (それが100年後であっても)物事全て寿命と同じ、始まりがあれば必ず終わりがあります。人間、生まれてくる場所や生まれ方は選べませんが死に場所や死に方は自分の希望が叶う可能性はかなりあります。言葉は悪いですが皆様方人生の着地点つまり、死に方死に場所を捜し求めて“あそこの店の販売価格が異常だの、仕入れ単価がウチとは違うだの、自店が助かる(延命)方法はだの…”焦りまくって右往左往しているように思えてなりません」─。

本当にそうだよね。安売り続けているGSは、最終的なゴールがあるわけじゃない。巨大元売が誕生し、その傘下で何千箇所もの直営店が展開しているいまとなっては、価格競争で優位に立つことなどもはや不可能。それは安売り量販店自身がだれよりも分かっていることではないだろうか。だが“わかっちゃいるけどやめられねぇ”というわけで、いつまでも♪スイスイ スーダララッタ スラスラ スイスイスイ~♪と歌い続けている。自ら破局を早めているかもしれないというのに。

一方、そんな量販店を非難するGS経営者も、対抗し得る有効な手段を編み出すことなく今日に至っている。「ST31」の書き込みを見ていても、やれ洗車だ、車販だ、異業種だと試みても、やはり主たる商品であるガソリンでしっかりマージンを確保することが最も有効な手段だとの意見が多い。ゆえに、商圏内で安売りを続ける店への怒りと憎しみがますます募る。それに対して安売り店は“どうせ俺たちは業界の嫌われ者”と、ますます意固地になって我が道を行く。みんなで英知を結集させてこの難局を乗り切ろうという発想は生まれない。

「百年に一度」と言われる自動車社会の変革期に、GS業界も否応なしに付き合わされ、新たな投資が必要となるだろう。しかし、冒頭の調査結果を受けて、金融機関はGS業界への融資に一段と消極的になると思われる。すでに「要注意取引業種」に分類されているとも聞く。もっと個人的なレベルの話においても、例えば娘の好いた相手がGSの従業員だと聞いて心配し、反対する親もいるかもしれない。“いや、お父さん、うちのカイシャはだいじょうぶです”といくら訴えても、業界の負のイメージは容易には払拭されない。いますぐ、劇的な回復は見込めないとしても、せめて“将来性”だけでも取り戻さないといけないんじゃないか。そのためにも、無益な価格戦争は終結させたほうがいいと思うのだが…。

 

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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