vol.760『セブンペイ続報』

『セブン&アイ・ホールディングスは、スマートフォン決済サービス「セブンペイ」を9月末で終了する方針を固めた。1日午後に都内で開く記者会見で発表する。同サービスは7月1日から始めたが、何者かに不正利用される事件が発生。セキュリティー対策には時間がかかり、信用回復も難しいことから撤退を決めた。9月末でサービスを終了し、10月1日以降、残高が残っている利用者には返金対応する。ITや小売り大手が力を入れている決済サービスを終了することはセブン&アイの成長にとって大きな痛手になる』─8月1日付「日本経済新聞」。

“えっ、やめちゃうの?!”と一瞬驚いたものの、まあ、賢明な判断だったかも。ここはいったん、往生際良く撤退して、信用回復に努めたうえでまた出直そう─そんな感じではないだろうか。被害人数は約800人、被害金額は3,860万円超と、被った損失は決して小さくないが、「セブンペイ」は比較的早い段階で“教訓”を学んだということで、もしかしたら幸いだったのかもしれない。この先、もっと巧妙かつ大規模な不正アクセス事件が起こる可能性は低くない、セブンの一件は“氷山の一角”と警告する専門家もいる。

まあ、リスクを恐れていたら、新しいことなんてできやしないのだが、今回の事件がキャッシュレス社会の孕む危険性を知らしめることとなったのは事実だ。キャッシュレス化を推し進める政府にとっても、冷や水を浴びせられた格好だ。個人的には、何もそんなにむきになってキャッシュレスにしなくてもいいじゃないか、と思うのだが、とにかく国民にもっと消費させたい政府としては、何としてもこれを成功させたい。

東北楽天ゴールデンイーグルスのホーム球場、楽天生命パーク宮城で、売店を完全キャッシュレス化したところ、飲食購入費が前年比26㌫も伸びたという。同じく、楽天傘下のサッカーチーム、ヴィッセル神戸主催試合時のノエビアスタジアム神戸では50㌫アップしたとか。その理由として、スムーズに買い物ができるうえ、ポイント還元などもあって現金より多めの金額を使う人が多いとのことだ。キャッシュレスによって金銭感覚を錯覚させていると言えなくもないが、それが狙いなのだろう。

もうひとつ、政府が目論んでいると噂されるのが、総額50兆円を超えるとされる“タンス預金”のあぶり出し。その切り札が新紙幣だという。「令和」の発表とほぼ同じタイミングで、新紙幣への切り替えが発表され、5年後をメドに流通が始まる。このような場合、日本では旧紙幣も引き続き使用できるというのが常識だったが、実は世界では紙幣を刷新すると同時に旧紙幣は使用できなくなるほうが普通なのだとか。例えば、2016年にインドはでは首相がずテレビ演説で、高額紙幣の1000ルピー札と500ルピー札を演説の4時間後から無効にすると突然発表した。国民はビックリ仰天、銀行の前に長蛇の列ができ、14兆ルピーとも15兆ルピーともいわれるお金が銀行に預け入れられた後、インドはアジア有数のキャッシュレス大国へと変容を遂げていったという。

もしかしたら、今度の新札切り替えで、日本もこれと似たようなことをやろうとしてるんじゃないだろうか、と噂されているのだ。とにかく、両替目的でタンス預金を銀行へ預け入れさせたところでもって、キャッシュレス決済で消費を促進、それを見計らったうえで、膨れ上がる社会保障費を賄うために消費税を20㌫まで引き上げる─。あくまで推測に過ぎないが、それぐらいの荒療治をしないと、日本のキャッシュレス化は進まないのかもしれない。消費税増税まで2ヶ月を切った。史上空前規模の、ポイント還元キャンペーンが始まろうとしている。果たして9ヶ月後には、思惑通り子どもからお年寄りまで、みんながスマホをかざしてお買い物をする世の中になっているだろうか…。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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