vol.768『キレる老人』

『岐阜北署は18日、器物損壊の疑いで、いずれも自称の岐阜市八代、自営業の男(62)を現行犯逮捕した。逮捕容疑は18日午後9時5分ごろ、同市正木北町のガソリンスタンドで、店舗の窓ガラスを消火器でたたき割った疑い。署によると、男性従業員が「(容疑者)が携行缶にガソリンを入れろと言ってきたため断ったら、帰ってくれない」と署に通報。その後、店舗の外にあった消火器でガラスを割ったらしい』─10月20日付「岐阜新聞」 web版。

いわゆる“キレる老人”というやつなのだろうか。人間は、老化とともに徐々に前頭葉の働きが鈍くなっていくので、怒りを抑える力が弱くなっていくらしい。もちろん、年を取って性格が丸くなる人もいるだろうから、やはり、その人の人格特性によるのだと思うのだが“キレる老人”は昨今社会問題化しつつある。

ある大学教授の研究によると、キレる高齢者が急増している背景には、現代日本特有の社会構造の変化が関係しているという。その教授によると、海外では、高齢者がキレやすくなっているという事例や研究論文などはほとんど見つかっていないとのこと。海外では仕事場以外の友人がいるのが普通だが、定年後の日本人男性は、会社を離れるとまったく人付き合いがなくなる人が多いという。さらに、人間関係が希薄な都市部で暮らす人は、自宅でも奥さんに邪魔者扱いされて居場所がなく、社会的孤立が深まり、ストレスがどんどん溜まってゆくのだ、と。

だからと言って、高齢者がキレやすくなっても仕方がない、などと甘受してくれるほど世の中は寛容ではない。2年ほど前に、産経新聞に、86歳の男性が、「キレる高齢者が増えているのは冷遇されているからだ。高齢者に温かい社会であってほしい」と投稿したところ、ネット上で物議を醸し、「年金と退職金をガッポリ貰えて、医療費も使いまくりな高齢者が冷遇されてるとはとても思えん」、「今の年寄りは、ワガママな奴ばかり。店の人や窓口の人に上から目線の口調だし。挙句、思い通りにならないと喚き散らして自己中そのもの。家から出ないで欲しいわ」など、ボコボコに批難されるという出来事があったそうな。何とも痛ましい。

世界に類例を見ない高齢者大国である日本では、この問題は、高齢者ドライバーの問題と共に年々深刻化してゆくものと思われる。GSでの接客においても、キレる客に遭遇し、辛酸をなめた方は少なくないのではないか。君子、いや君子でなくとも“危うきに近寄らず”。セルフ化して極力お客とは接触しないようにするのは、サービス業としてはどうなんだ、と言われるかもしれないが、止むを得ない。下手にお客に近づいていって、「最近ガソリン高いぞ」などと言いがかりを付けられたんじゃたまらん。

それに、お客のほうだって、拙劣な接客をされるぐらいなら、暑い日も寒い日も、丁寧に案内してくれる端末機の音声に従って給油するほうが精神衛生上良いと思うのだが。私自身、家内から「よくそんなに怒ってばかりいられるわね」と呆れられる。自分としては、ずいぶん忍耐強い人間だと思うのだが、やはり、要領を得ない受け答えや段取りの悪い接客、無愛想な応対などにはイラッとするのは確かだ。というか、イラッとしない人なんていないだろう。大方の人はキレないだけであって、日々、酷い接客に耐えているのだ。

だから、私自身もセルフが好き。人間嫌いというわけではないが、物の売り買い程度のことは出来る限り機械を相手に行ないたい。でも、そんなこと言ってセルフスタンドの監視室に引きこもって社会と関わるのを面倒臭がっていると、前頭葉の鈍化と共に、いつの間にか私もキレやすいジジイになっているかもしれない。やだな~。歳は取りたくないものだ。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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