vol.775『大腸憩室炎を経て』

昨年の8月のこと、夜中にスタンドで店番をしていると、酷い腹痛に襲われ、早朝、妻に迎えに来てもらって近所の病院へ。以前、腎臓結石の痛みで病院に駆け込んだことがあったので、今回もそうだろうと思いつつ、救急診療室で痛み止めの点滴を受けていたら、ドクターがやってきて「和田さん、大腸憩室炎ですね」と─。

“ケイシツ”って何?詳しくはネットで調べていただければと思うが、大腸の壁面にはポコポコと幾つもくぼみがあって、そのひとつに細菌のようなものが溜まり、炎症を起こすという病気。私の場合は、S状結腸のカーブしている辺りで発生しているという。通常、限りなくゼロに近いCRPという血液中の炎症反応数値が、「22」もあり、このまま放っておくと腸に穴が開いて腹膜炎を引き起こす可能性があるので、すぐに入院してください、と─。

“どうしても入院しなくちゃいけないんですか?仕事があるんで、とりあえず鎮痛薬で抑えてもらって、あす以降通院で、というわけには…”という零細企業経営者の哀願は、上記の理由であっさり一蹴され、人生初めての入院生活を経験することとなった。幸い、抗生剤と絶食のおかげで入院3日目にはCRPの数値も下がり、外科にまわされることなく11日間の療養で済んだが、つらい経験であった。

痛みそのものは入院2日目ぐらいで収まったのだが、点滴の管に繋がれ、ベッドの上で過ごす日々は精神的にキツかった。個室病棟に入れてもらったおかげで、携帯電話やパソコンを自由に使えたため病室に居ながらある程度仕事はできたものの、ちょうどこの頃は、前々回の本コラムでご紹介した、「エルシーシステム」の開発でいろいろと大変な時期だった。あれこれ心配しても大腸に障るだけで、どうすることもできないのだが、生来の気質が災いしてイライラ、モヤモヤしながら毎日を過ごした。

「エルシーシステム」は当初、紙幣を投入して給油し、おつりが出た場合はリライトカードに書き込んで返却するという、きわめてシンプルな仕組みの給油システムとして開発が進んでいた。しかし、開発過程でキャッシュレス化の大きな潮流が生じ、現金オンリーではなく、キャッシュレス決済も可能なものにしてほしいとの要望がクライアントから出されたのである。当初は、クレジットカードを読み取る機能を追加する方向だったのだが、それでは他のPOS端末機と大して変わりがない。それに、クレカがこの先もキャッシュレス決済の主役であり続けるのかどうかもわからなくなっていた。あれこれ思案している中で、憩室炎になった。

近年、研究によってその多岐に渡る機能ゆえに“第二の脳”と呼ばれる腸。当然、ストレスに敏感に反応する。猛暑の疲れと相まって、当時56歳の初老男性の腸はずいぶんとダメージを受けていたのだろう。その後、紆余曲折を経て、スマホ決済に特化したキャッシュレス機能を追加することとなり、先月、西日本のPBスタンドにおいてリリースすることができた、というわけ。といっても、まだ産まれたばかりの子どもで、これから多くのGSで愛用してもらえるかどうか予断を許さない。この先、また腸がねじれるような試練が待ち受けているかもしれない。モノを作るのも、売るのも大変なことだ…。

昨年、病院のベッドで臥せっているあいだに、「せっかく人生初の入院を経験したのだから、何か一つ健康にいいことを始めてみようかな」と思いたち、とりあえず好きな酒をやめることにした。ドクターストップを受けたわけでもないので、どれぐらい続くかと思っていたのだが、自分でも不思議なくらい、酒を飲みたいと思わなくなった。以来、1年5ヶ月、断酒を継続中である。GS経営者には酒飲みの方が多いので、どうか誘惑しないでください。各位におかれましては、健康にはくれぐれもご留意なさいますよう。来年もどうぞよろしく…。

 

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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