vol.778『いきなり!ステーキ』

手頃な厚切りステーキで人気を集め、6年間で500店舗近くまで一気に出店した「いきなり!ステーキ」が、この春までに44店舗を閉める。1月13日には、まず26店舗が閉まった。名古屋市内にも8店舗あるが、今回はすべて存続するようだ。

私も数年前に妻と一度だけショッピングモール内にある「いきなり」に行ったことがある。二人で幾ら払ったのか正確には覚えていないが、まあまあの金額だったように思う。味はといえば、普通。“まあ、こんなものかな”という感じで、この程度なら、いずれ飽きられるんじゃないかな~と思っていた。

先月、東京都内の「いきなり!」店舗には、社長直筆の次のような告知が貼り出され、話題となった。『お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります』─。“上から目線だ”などと批判され、2週間ほどで取り外されたらしいが、“切羽詰った感”がハンパない。張り紙を見た客は“この店大丈夫か”と思ったんじゃないだろうか。

仮に、GS業界で『…減少しております。このままでは…』とやったら、“ふ~ん、あ、そう”でおしまいだろう。GS過疎地ならいざ知らず、最盛期の半分近くまで減っても、大抵の地域ではGSはまだ多過ぎるぐらい。その地域の最安値店なら多少惜しまれるかもしれないが、だからと言って“あのスタンドを助けてあげよう”なんてだれも思わないだろう。

「いきなり!」の成長路線の頓挫について、ある経済ジャーナリストは、限られた店舗数だと希少性があり、物珍しさから客が集まっていたが、店の数が増えたことで、真新しさがなくなってしまったうえ、各店舗の距離が近くなり、自社の店同士で客を奪い合うという状況も生まれたと分析している。「いきなり!」に限らず、これまで店舗を急拡大させてきた会社が、一度は直面する問題だ。

かつては“290円中華そば”で「デフレの勝ち組」とまで言われた「幸楽苑」も、4月までに全店舗の約1割にあたる51店舗を閉店する発表した。「幸楽苑」が急成長させたのが“290円中華そば”なら、「幸楽苑」を苦境に陥れたのも“290円中華そば”だった。「幸楽苑」は郊外型店舗が多く、おもな客層は家族連れのため、土日の集客はあるが平日が厳しいということで、看板だった“290円”をやめて、2015年から500円前後に引き上げたことが、客離れを招いてしまったのだという。

翌年には異物混入事件が発生し、窮地に立たされた同社が取った戦略は、当時勢いのあったなんと「いきなり!」のFC加盟(2017年)だった。思い切った業態転換と、当時は賞賛されたが、その「いきなり!」も業績不振に陥ってしまったというわけ。「いきなり!」の閉鎖店舗の多くは、「幸楽苑」が得意とする郊外型店舗。ファミリー層でもスタンダード価格2千円のステーキを食べてもらえるとの強気の読みがはずれ、その戦略に乗った「幸楽苑」も、「いきなり!」店舗は十数店舗どまりと苦戦している。

郊外型店舗で安売りを仕掛け、顧客を会員化して集めたところで“もうそろそろいいだろう”と価格帯やポイント規定を引き上げたりすると、たちまちそっぽを向かれ、客を呼び戻すために以前にも増して安売りを余儀なくされるという現象については、GS業界のほうが“豊富な”経験を有している。「いきなり!」さんは、GS業界の惨状を研究していればよかったかも。一方、いまや同じ路線に、同じマークの店舗が何軒も並ぶようになってしまったGS業界。“カニバリズム”というおぞましい用語で称される、同系列での客の奪い合いが生じている。しかも、ガソリン消費量は年々減少中。こちらも“いきなり”大規模な店舗閉鎖が行なわれるかも。

手頃な厚切りステーキで人気を集め、6年間で500店舗近くまで一気に出店した「いきなり!ステーキ」が、この春までに44店舗を閉める。1月13日には、まず26店舗が閉まった。名古屋市内にも8店舗あるが、今回はすべて存続するようだ。

私も数年前に妻と一度だけショッピングモール内にある「いきなり」に行ったことがある。二人で幾ら払ったのか正確には覚えていないが、まあまあの金額だったように思う。味はといえば、普通。“まあ、こんなものかな”という感じで、この程度なら、いずれ飽きられるんじゃないかな~と思っていた。

先月、東京都内の「いきなり!」店舗には、社長直筆の次のような告知が貼り出され、話題となった。『お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります』─。“上から目線だ”などと批判され、2週間ほどで取り外されたらしいが、“切羽詰った感”がハンパない。張り紙を見た客は“この店大丈夫か”と思ったんじゃないだろうか。

仮に、GS業界で『…減少しております。このままでは…』とやったら、“ふ~ん、あ、そう”でおしまいだろう。GS過疎地ならいざ知らず、最盛期の半分近くまで減っても、大抵の地域ではGSはまだ多過ぎるぐらい。その地域の最安値店なら多少惜しまれるかもしれないが、だからと言って“あのスタンドを助けてあげよう”なんてだれも思わないだろう。

「いきなり!」の成長路線の頓挫について、ある経済ジャーナリストは、限られた店舗数だと希少性があり、物珍しさから客が集まっていたが、店の数が増えたことで、真新しさがなくなってしまったうえ、各店舗の距離が近くなり、自社の店同士で客を奪い合うという状況も生まれたと分析している。「いきなり!」に限らず、これまで店舗を急拡大させてきた会社が、一度は直面する問題だ。

かつては“290円中華そば”で「デフレの勝ち組」とまで言われた「幸楽苑」も、4月までに全店舗の約1割にあたる51店舗を閉店する発表した。「幸楽苑」が急成長させたのが“290円中華そば”なら、「幸楽苑」を苦境に陥れたのも“290円中華そば”だった。「幸楽苑」は郊外型店舗が多く、おもな客層は家族連れのため、土日の集客はあるが平日が厳しいということで、看板だった“290円”をやめて、2015年から500円前後に引き上げたことが、客離れを招いてしまったのだという。

翌年には異物混入事件が発生し、窮地に立たされた同社が取った戦略は、当時勢いのあったなんと「いきなり!」のFC加盟(2017年)だった。思い切った業態転換と、当時は賞賛されたが、その「いきなり!」も業績不振に陥ってしまったというわけ。「いきなり!」の閉鎖店舗の多くは、「幸楽苑」が得意とする郊外型店舗。ファミリー層でもスタンダード価格2千円のステーキを食べてもらえるとの強気の読みがはずれ、その戦略に乗った「幸楽苑」も、「いきなり!」店舗は十数店舗どまりと苦戦している。

郊外型店舗で安売りを仕掛け、顧客を会員化して集めたところで“もうそろそろいいだろう”と価格帯やポイント規定を引き上げたりすると、たちまちそっぽを向かれ、客を呼び戻すために以前にも増して安売りを余儀なくされるという現象については、GS業界のほうが“豊富な”経験を有している。「いきなり!」さんは、GS業界の惨状を研究していればよかったかも。一方、いまや同じ路線に、同じマークの店舗が何軒も並ぶようになってしまったGS業界。“カニバリズム”というおぞましい用語で称される、同系列での客の奪い合いが生じている。しかも、ガソリン消費量は年々減少中。こちらも“いきなり”大規模な店舗閉鎖が行なわれるかも。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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