vol.801『コロナ時代の決済手段』

消費税増税による景気の落ち込みを下支えすべく、昨年10月から実施された「キャッシュレス・ポイント還元事業」が、先月末終了した。インターネットリサーチ会社「楽天インサイト」が6月に行った調査によると、「最も利用する決済手段」では「クレジットカード」41.8㌫が、「現金」29.1㌫を大きく上回った。また、「ポイント還元制度」終了後にキャッシュレス決済を利用したいと思うか聞いたところ、「利用したい」は74.7㌫だった一方、「利用したくない」は5.4㌫と極めて少数だった。政府のもうひとつの目的だった、キャッシュレス化の推進は一定の成果を挙げたといえるだろう。

 

本来なら、東京五輪開会式まで10日余りとなり、首都圏をはじめ、日本中に外国人客が押し寄せ、拡充されたキャッシュレス決済網でインバウンド需要を取り込むはずだったのだが、コロナウイルスによってその目論見は吹き飛んでしまった。こうなってしまっては、キャッシュレス化の推進は無駄骨だったのかというと、そうでもない。民間調査会社「MMD研究所」が4月に実施した調査によると、調査対象の5530人の約2割が支払い方法に変化があると回答。最も利用が減ったのは現金(73.6㌫)で、増えたのはQRコード式のスマホ決済(78.9㌫)という結果が出た。同社は「感染対策の面から今後もキャッシュレス決済の利用が増えていく」と分析している。

コロナウイルスの感染拡大は、キャッシュレス化、とりわけスマホ決済の普及に思いがけない“追い風”をもたらしている。スマホ決済各社は、この機を逃すなとばかりに、ユーザー獲得競争を激化させることだろう。例えば、スマホ決済で4割強の圧倒的シェアを誇る「PayPay」は、8月1・2日の2日間限定で決済の5回に1回の確率で1等の2、000㌫から4等の2㌫までのいずれかがあたる抽選キャンペーンを実施する。その後も8月末まで1等1、000㌫から3等5㌫までの抽選キャンペーンを展開する。それにしても、2000㌫ってことは20倍。もし5千円の買い物で当選したら、10万円。コロナ給付金一人分の金額だ。8月1・2日は、「PayPay」を使えないお店は閑古鳥が鳴いているかも…。

 

一方、政府主導によるキャッシュレス還元施策の第2弾として、9月からの開始を予定しているのが「マイナポイント事業」。これはマイナンバーカードに特定のキャッシュレス決済1つをひも付けて決済や料金をチャージすることにより、最大で5000円分がポイントなどで還元される施策だ。特別定額給付金の申請のためにマイナンバーカードを取得した人が増えていることをにらんでの施策だが、「LINE」は、「マイナポイント」に「LINE Pay」を登録すると、還元分に加えて特典クーポン5枚がもらえるキャンペーンを9月からスタートさせる。他社も、マイナカード利用者を獲得しようとキャンペーンを開始する予定だ。

自治体も独自のキャンペーンを展開する。静岡県浜松市では、今月から「PayPay」と連携した30㌫ポイント還元キャンペーンを展開している。佐賀県唐津市でも、8月1日から.「PayPay」決済額の最大20㌫をポイント還元するキャンペーンを開始する予定。コロナウイルスの影響で客足が落ち込んだ観光施設や土産物店での消費につなげるために、今後も同様のキャンペーンが全国の市町村で展開される模様だ。

コロナ禍の前から、スマホ決済事業者はユーザー獲得のために熾烈な消耗戦を展開してきたため、各社軒並み大赤字を出している。今後、戦線離脱する業者も現れるだろう。今年2月にはQR決済の草分けだった「オリガミ」が「メルカリ」に買収された。一時は企業価値400億円以上だった「オリガミ」だが、たったの259万円でたたき売られた。だが、そんなことは一般消費者には関係ないことであり、前述のとおり、ポイント還元の魅力に加え、感染対策の面からもスマホ決済は加速度的に普及してゆくことだろう。GS業界はこのトレンドに乗ることができるか。関心のある方は、ぜひ、「エルシーシステム」の導入をご検討願いたい。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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