vol.804『お手本』

『マスクはガソリンで消毒すればいい―。フィリピンのドゥテルテ大統領が7月31日の演説で、新型コロナウイルスを巡り、科学的根拠のない対策をぶち上げた。ガソリンの業界団体は、吸入すると有害だとして、真に受けないよう呼び掛けている。ドゥテルテ氏は同21日の演説でも「マスクをガソリンかディーゼル油に浸せば、新型コロナの野郎は死滅する」と発言し、保健省幹部が「大統領お得意のジョークだ」と打ち消していた。しかし、ドゥテルテ氏は今回の演説で「冗談で言っているのではない。本当だ」と反発した。』─7月31日付「共同通信」。

過激な発言でしばしば物議を醸し“フィリピンのトランプ”と呼ばれるドゥテルテ大統領。相変わらずですな。一方“本家”米国・トランプ大統領は、今年の2月には「ウイルスは遅くとも4月までに、奇跡のように消えるだろう」と豪語していたが、結果はご覧のとおり。米国のウイルス死者数は15万人を超え、世界ダントツ。これまで、マスクを着用することを拒み続け、マッチョを演じてきた大統領もさすがに事の深刻さに気づいたのか、最近は大統領の紋章が入った紺色のマスクをしてメディアの前に現れるようになった。記者団に対し大統領は、「マスク着用は素晴らしい、反対したことなど一度もない」と強弁。数ヶ月前には、マスクをしている民主党・バイデン候補を弱虫呼ばわりしていたんですけどね。

日本では、首相の名前がマスク名に冠せられるほどで、マスク着用に対する意識は諸外国と比べて高かった。政府は先月30日、 介護施設などを対象に布マスク約8000万枚を追加で配布すると発表したが、 対象者などからは「布マスクは洗う手間もあるし、使い捨ての方が衛生的」「今はマスクが手に入る。税金の無駄遣い」などの手厳しい意見が相次いでいるとのこと。最近になって首相自身、「ベツノマスク」を着用するようになり、訳を問われると、「この半年間、さまざまな施策を講じてまいりました。現在、お店でもいろんなマスクが手に入るようになりましたので」とのことだった。

マスクをしなければ非難され、したらしたでいろいろと言われる─一国のリーダーというのは大変ですな。もちろんそれは注目されている証。例えば、トランプ大統領が、国民に向けて、早い段階でコロナウイルスの脅威について訴え、マスク着用を励行していれば、これほど多くの感染者を出さなかっただろうと多くの人が指摘している。米国では、マスク着用を法律で義務化しないと、感染の勢いを食い止められないとの危機感があるが、「国民の自由の侵害」だとして強固に拒む人々がいる。その中心はトランプ支持層でもある共和党系保守派だといわれている。それゆえ、「大統領マスク着用奨励」のニュースは、彼らにとって少なからぬショックだったと報じられている。

国レベルの話でなくとも、職場で経営者がマスクを率先して着用し、消毒や換気などに鋭い関心を示し、会議や呑み会をオンラインで行うなどするなら、多くの従業員はおのずとコロナウイルスに対する健全な習慣を持つようになるのではないか。GS、とりわけスタッフ給油のお店では、フェイスシールドの装着などを徹底させるなら、お客も“あのお店は感染予防の意識が高い”と好感を抱いてくれるに違いない。

家庭レベルでは、親が石鹸でしっかり手を洗うことや、いわゆる“新しい日常生活”を極端にならない程度に実践することで、子どもたちに手本を示し、教育してゆくことになる。つまり、ウイルス感染を防ぐために最も肝要なことは、「正しい知識を学ぶこと」なのだと思う。国家元首がウイルスに対して謙虚な怖れを示すなら、それが多くの国民の命を守ることにつながるということを、世界の指導者は認めるべきだろう。ところで比・ドゥテルテ大統領、一昨日(1日)も、「アルコールが手に入らないなら、特に貧乏な人はガソリンスタンドに行って何滴かガソリンを手に垂らせばそれで事足りる」と頑なに持論を展開している。フィリピン保健省によると、7月31日現在、国内の感染者は9万3354人、死者は2023人に上るとのことである。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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