vol.839『消費税の話』

『商品やサービスの値札、チラシに消費税込みの価格を示す「総額表示」が4月1日に義務化される。税抜き価格での表示を認める特例が3月末に期限を迎えるため。税込み表示だと消費者が買い物の際に支払う総額が一目で分かるメリットがあるが、小売業界などには値上げと誤解されるとの懸念もある』─3月22日付「時事通信」。

GS業界は消費税が導入された1989年当初から総額表示が基本となっているので、このニュースあまりピンとこないのだが、「値上げと誤解される」って、日本の消費者はそんなにアホなのか?いままでだって会計時に消費税が加算された金額を払ってきたのだから、表示方法が変わったからといって買い控えるなんてことはないはずだ。しかし、 日本チェーンストア協会が行った調査では、2004年4月に総額表示が義務づけられた際、全国のスーパーの売り上げが前年同月より4.4%減少したそうで、総額表示が値上げと誤解される証左だという。もしそうだとすれば、やはり日本の消費者はアホなのだろうか。

一方、この機会にちゃっかり値上げを行なう業界も。モスフードサービスは主力の「モスバーガー」を今月から税込み390円と、持ち帰りで20円値上げする。丸亀製麺も全体の約4分の1にあたる商品で10円から30円値上げ。いずれも、コロナウイルスの影響で持ち帰りが増え、レジ袋などのコストや人件費が増えたことを理由に挙げている。日清オイリオは原料価格の高騰などから食用油を段階的に1キロあたり50円以上値上げ。マルハニチロはサンマの記録的な不良を理由にかば焼きなど4品目で1缶あたり30円値上げ。

ガソリンは11月半ば以降18週連続で値上がりし、3月31日の全国平均は1年2ヶ月振りに150円台となった。ただ、欧州でのコロナ再拡大に伴う原油価格の下落を受け、すでに石油元売各社は2週連続で卸価格を引き下げている。また、主要産油国が2日までに段階的な増産に合意したとのことで、来週以降値下がりとなりそうだ。何とか140円台で踏ん張ってほしいものの、すでに愛知県・日進市は130円台半ばまで下落している。無論「総額表示」ですよ。

デフレ脱却が日本経済再生の絶対条件といわれて久しいが、コスト上昇によるインフレは消費マインドを萎縮させるだけ。そうでなくてもコロナ禍で外出の機会が減り、消費が抑えられているとあって、個人預金は去年12月末時点で1056兆円と過去最高に膨れ上がっている。つまり、いまの値上げは「悪いインフレ」を生じさせているわけで、「良いインフレ」、つまり個人消費が拡大するのに伴って物価が上昇してゆくよう誘導するためには、消費税を時限的に凍結・減税すべきと主張する経済学者もいる。

そもそも消費税導入の大義名分は、年々増加する社会保障費を賄うためなのだが、今月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳まで働き続けることが国主導で推進されている。定年延長の希望者に70歳まで雇用の機会を与えることで「人生100歳時代」の老後資金をもっと準備できるようにするというのが表向きの理由だが、実のところ、「これから年金支給年齢は上がり、支給額は下がる一方なので、働けるあいだは自分で稼いでください」と言われているような気がしないでもない。

実際、厚生年金保険受給者の平均年金月額は、令和元年度末現在で、老齢年金は14万6千円、国民年金受給者では5万6千円。年金だけで暮らしていれば赤字で、貯金を切り崩してどうにか生活できるといったところか。コロナ禍による将来不安が追い討ちをかけ、現役世代はますます預貯金に走ると思われる。GS業界ではすでに大勢の高齢者が戦力となっている。セルフスタンドであれば、70歳を過ぎても全然大丈夫。資格を取って是非申し込んでいただきたい。

消費税の話から少々脱線したけれど、この戦後最大の危機ともいえる状況の中で、税金を有効に使っていただきたいというのが納税者の切なる願いだ。財務省は、コロナ対策で使った税金を回収すべく、収束後に「コロナ復興税」として消費税を15㌫に引き上げるという気の早い計画を立てているとのうわさも。コロナが収束してほしいような、してほしくないような話。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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