vol.848『手数料は高いか安いか』

「PayPay」加盟店に次のような通知が送られてきている。

『いつもPayPayをご利用いただき、誠にありがとうございます。従来よりご案内のとおり、PayPayの決済システム利用料は、2021年10月1日より有料の予定です。具体的な利用料率につきましては、3月末にお知らせする予定でございましたが、現在のコロナ禍の状況および経済情勢等を鑑み、2021年8月31日に変更させていただきます。今後とも弊社サービスをご愛顧賜りますよう、お願い申し上げます』─。

まあ、いずれこうなることは分かっていたわけだけれど、コロナ禍で経営が悪化している小規模事業者からは「有料になるならやめる」との声も出ているらしい。気持ちは分かるが、それはお客様の利便性をないがしろにした少々身勝手な話だなとも思う。お店の評判は間違いなく落ちるだろう。

一昨年10月1日からの消費税増税の痛みを緩和させるべく始まったキャッシュレス関連事業でキャッシュッレス決済、とりわけスマホ決済は急速に拡がっていった。還元事業は昨年6月で終了したが、今度はコロナ禍が“追い風”となり、昨年度のキャッシュレス決済比率は3割に達し、政府が掲げる「2025年に4割程度」の目標に近づいている。

とにかく「PaiPay」はじめ、スマホ決済業者は加盟店獲得のために、凄まじいポイント還元キャンペーンを展開してきた。“スマホ決済ができない店舗は消費者に見放される”という危機感を煽ったうえに、「初期費用ゼロ、手数料タダ」と謳って加盟店を急速に増やしてきたのだが、大盤振る舞いした販促コストを回収する段階に入ったということだろう。

では、手数料率はどうなるのか。スマホ決済大手6社は3.24~3.75㌫とのことだが、コロナ禍の現状を鑑み、加盟店離れを防ぐためにも利率を下げる可能性はありそうだ。スマホ決済はそのほとんどが事前にチャージして使う前払い方式なのだから、クレカのように与信コストが必要ない分、手数料をかけるとしても、クレカより安く抑えるべきじゃないかという声もある。

利益率の低さでは人後に落ちないGS業界では、仮に2㌫だとしても痛い。ところが、店頭価格を150円台にしようとしているさなかに135円で販売しているGSがいまだ散見されており、約2.7円が手数料として取られてしまうわけで、ナンボ残るのよ?という話だ。キャッシュレスで売れば売るほど赤字だ。

飲食店の中には、キャッシュレス決済の場合は代金に手数料分を上乗せする店がある。違法行為ではないが、クレカ主要5社は加盟店規約においてこうした行為を禁じており、規約に違反した場合是正勧告を行ない、従わなければ契約解除になる。「ランチタイムはカード不可」とするような店も、見方によっては規約違反になるらしい。GS業界も、ひと昔前は「クレジットはプラス5円」なんて看板を店頭に堂々と掲げる店が結構あった。そんなことなら、はじめからカード加盟店なんかになるなよと言いたい。

先に述べたとおり、スマホ決済事業者は莫大な先行投資を回収しなければならない。例えば、ソフトバンクグループにおいて「PayPay」の決算だけを見ると834.6億円もの営業損失を出している。せっかく集めた利用者を繋ぎ止めておくためにはこれからも販促キャンペーンを打たざるを得ないだろう。“巨費を投じて派手な集客してあげているんだから、手数料払うのは当然でしょ”と言われたら従わざるを得ない。

実業家“ホリエモン”こと堀江貴文氏は、「東洋経済」誌で『僕から言わせれば、3㌫の手数料も負担できないような店は、そもそも経営が危ない。便利なモバイル決済を採り入れる発想がない店には、将来はないだろう』とバッサリ。ご高説謹んで承ります。「経営が危ない」当社は“オワコン”と嘲られようとも、高い手数料を払いたくないので、頑なに「現金前払い」でやらせていただいております…。

 

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
(このコラムに関するご意見・ご感想は、FAX 0561-75-5666、またはEメール wadatradingco@mui.biglobe.ne.jp まで)


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206