vol.852『イッツ・ショウタイム!』

戦後のヒット歌謡曲第1号である『リンゴの唄』の作詞者として知られる詩人サトウハチロー(1903-1973)は大の野球ファンであり、『長嶋茂雄選手を讃える詩』という詩をつくっている。

「疲れきった時/どうしても筆が進まなくなった時/いらいらした時/すべてのものがいやになった時/ボクはいつでも/長嶋茂雄のことを思い浮かべる/長嶋茂雄はやっているのだ/長嶋茂雄はいつでもやっているのだ/どんな時でも/自分できりぬけ/自分でコンディションをととのえ/晴れやかな顔をして/微笑さえたたえて/グランドを走りまわっているのだ/ボクは長嶋茂雄のその姿に拍手をおくる」─。

□高度経済成長の鼓動と呼応するように活躍した「ミスタープロ野球」の活躍に興奮し胸躍らせた当時の人々の気持ちを代弁するかのような詩である。そして一人のアスリートが、いかに人々を勇気付け、希望をもたらすかをこの詩は物語っている。

時は流れ、コロナ禍の陰鬱な空気が漂う世の中にあって、私はいまサトウハチローと同じ心境にいることを嬉しく思う。無論、詩の中の人物名はサトウハチローと同じ岩手県出身の「大谷翔平」に置き換えて─。

6月のアメリカンリーグ打者部門の月間MVPに選ばれた直後の2日(日本時間3日)のオリオールズ戦でまたまたホームランを連発。同点で迎えた9回裏には四球で出塁後すかさず二盗、4番J・ウォルシュの右前打でサヨナラのホームに滑り込んだ。一昨日のヤンキース戦で先発し、1回7失点でKOされた鬱憤を晴らすかのような大活躍。ホームラン数は両リーグ最速で30本となり、ライバルV・ゲレーロjr.(ブルージェイズ)に3本差をつけた。(2日現在)

これだけでも立派なものだが、大谷翔平と言えば、やはり“二刀流”。先月5日のマリナーズ戦に先発し6回2失点で勝ち投手となった翌6日には、2番DHで花巻東校の先輩・菊池雄星からホームラン。同18日には、観客動員100㌫となったエンゼルススタジアムでのタイガース戦で6回1失点で3勝目を挙げ、翌日は2ホーマーを放ち、大観衆を熱狂させた。普通、100球近く投げたピッチャーの体は全身筋肉痛でバキバキになるのだが、次の試合でホームランを打つなんて、まったくもってアンビリーバブルなことなのだ。

ところで、試合後の球場前で「日本人として誇らしい」と喜ぶ日本人観客を見てげんなり。そういうレベルの話じゃないんだよ。わかってんのかね。もし今期 大谷が投手で二桁勝利を挙げたら“球聖”ベーブ・ルースが1918年に達成(13勝・11本塁打)して以来のとてつもない偉業なのだ。彼がどこの国の出身かなんてことは関係ない。オリオールズのB・ハイド監督がいみじくも語ったように、大谷は「この惑星で最高の選手」なのだ。

大谷の活躍に沸く米国。ワクチン接種が進み、雇用情勢も回復、2日のニューヨーク株式相場は史上最高値を更新した。一方、今月23日にオリンピック開催を控える日本では、コロナ感染者数が首都圏で再び増加に転じており、“第5波”の門口にあると専門家は警鐘を鳴らしている。頼みの綱のワクチンはここへ来て“品薄”状態。確か全国民に2回接種するだけのワクチンを確保したと言っていたはずだが、どうなっちゃったんだろう。五輪関係者からは「無観客も覚悟しなければならない」との声も。個人的にはオリンピックには興味がないのでどうでもよいのだが、スポーツニュースで大谷選手の活躍の放映時間が削られやしないかと気をもんでいる。とにかく私はいま大谷翔平に夢中なのだ。

「売上が振るわず/がっかりする時/仕入れ価格が上がり続け/はらはらする時/市況が思い通りに上がらず/いらいらする時/コラムがどうしても書けず/くじけそうになる時/すべてのものがいやになった時/ボクはいつでも/大谷翔平のことを思い浮かべる/大谷翔平はやっているのだ/晴れやかな顔をして/微笑さえたたえて/グランドを走りまわっているのだ/ボクは大谷翔平のその姿に拍手をおくる」─。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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