vol.685『24時間働きますか?』

人手不足が深刻化する中、コンビニ大手「ファミリーマート」が、24時間営業の見直しを検討しているらしい。すでに、深夜などの来店客が少ない時間帯に限り、一部店舗で一定の時間、店を閉める実証実験を行っている。その一方でファミマは、店舗でコインランドリー事業を始めると先ごろ発表、2020年2月末までに全国500店舗で運営するとのことだ。こちらは24時間営業で、洗濯中はコンビニ店内のイートインスペースで待てるようにするという。

いまや、社会インフラとして、私たちの生活になくてはならない存在となったコンビニ。その一番の売りは“いつでもやっている”という利便性に尽きる。その特性を生かして、外食、物流、金融など、様々なサービスを兼ね備え、コインランドリーも…と“進化”してゆく一方で、時給を1、200~1、300円にしても人手が確保できず、加盟店オーナーが不眠不休で店を守り続けるという悲惨な状況が社会問題化しており、コンビニの基本条件ともいえる「24時間営業」を見直さざるを得ないところまで追い込まれている。

「フアミリーマート」の沢田貴司社長は、「日経ビジネス」のインタヴューにこう答えている。『とにかく「できない」という前提に立つことはしない。できないと言ったらそこで思考停止。それは許されない。だからトライだけはしてみようと』─。

品出しや清掃などの深夜作業ができなくなることを24時間営業の理由にあげていることについても沢田社長は『それは本当みんな言いますよね。「うるせえ!」と叫んでやりたい。それを持ち出したら何もできなくなりますよ』と訴え、『とにかく研究です。研究しない会社は終わると思うんです。何かルールを決めてしまって、それだけに従うような会社は。ものすごく変化する時代だし、テクノロジーもどんどん進歩する。決めつけはなにより怖い』と語っている。(11月6日付「日経ビジネス」)

一方、最大手「セブンイレブン」の古屋一樹社長は同じ雑誌でこう答えている。『セブンイレブンとして、24時間営業は絶対的に続けるべきと考えています。確かに深夜帯はお客が少なくて、売上げも大きくありません。けれど、もし午前7時〜午後11時の営業にしたら、深夜分の売上げ以上に、昼の売上げが落ちるんです。全体で3割は減収になると思います』─。

シャッターを下ろしたうえで店内作業に専念させるという考えはないかとの問いに対しても古谷社長は、『だって店が何のために営業しているかといったら、やっぱりお客様に利便性を提供するためですから。ライフスタイルが多様になり、いろいろな時間にいろいろな人が動いています。24時間営業の見直しというのは、我々、基本的には議論もしたことがないですし、加盟店からもそんな声は全く出ていないですね』と一蹴している。

業界一位と二位の社長の考え方がこれほど対照的なのはあまりないことだと思う。そして、この二人の経営者のどちらが正しいと思うかを考えてみるのは、 “24時間業界”の一員であるGS経営者にとって決して無駄ではない。

GSの24時間営業と言っても、セルフであればそれほど大変というわけではない。むしろ、「ライフスタイルが多様になり、いろいろな時間にいろいろな人が動いて」いる時代だからこそ、深夜でも高級洗車やタイヤ交換をするGSが出現してもおかしくない。コインランドリーや宅配ボックスを併設しているGSはすでにある。また、せっかく一晩中店を開けているんだからということで、深夜帯の販売価格を上げてコスト軽減を図るという手もある。それとも、ファミマ同様、“本当に24時間やらなくちゃいけないのか”というところに立ちかえり、売上げやコストを分析し、オペレーションを再構築したほうがよいのかも。いずれにせよ、24時間営業をめぐるコンビニ業界の今後の動きは、私たちの業界にも少なからず影響を与えることだろう。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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