vol.639『事後調整禁止令?』 

毎日新聞が、18日に、経産省が元売5社の系列内格差を是正すべく監視強化に乗り出したと報じた。まるでスクープ記事のような報じ方だったので苦笑してしまった。恐らく、GS業界の人たちの大多数は、あの記事を読んで“いまさら何を言っているんだ”とつぶやいたのではなかろうか。それはともかく、記事によれば、『経産省は、販売量が多く交渉力のある一部の給油所を除けば、元売会社の主導で値引き額が給油所ごとに決められ、小売価格を通じて消費者にも影響が及ぶことを問題視している』とのことだ。無論、ガソリン価格を全国どこへ行っても同じにしようというのは現実的ではない。あるGSが周辺より安い価格で売ったからといって、それが悪いことではない。むしろ、安く売るための“企業努力”をしていると見るべきだろう。
だが、仕入れ価格を、在って無いが如くに考え、採算を考慮せずにとにかく販売量を捌いて、あとは元売からの事後調整で利益を確保しようという商売は、もういい加減やめにしておけということなのだろう。毎日新聞の記事によれば、事後調整の原資を確保すべく、比較的市況が安定している地域のGSや、いつも黙って言い値で買ってくれる“大人しい”GSには高い仕入れで売りつけていることを経産省が問題視しているという。
確かに不公平な話のように思えるし、いつまで経っても悪しき習慣を絶てないでいる元売に業を煮やしたお上が正義の鉄槌を下したかのようにも見えるが、ひねくれ者の私の推理は違う。今回の経産省の指導を一番喜んでいるのは、実は元売ではないだろうか。
「支店長、来月うちは決算なので、そろそろ利益確定したいんだけど」
「社長、ご支援したい気持ちは山々なんですが、うちは今期から事後調整を廃止したんです」
「またまた~冗談きついよ」(笑)
「いえ、本当です。当局からのキツイお達しで、配送コスト分以外は全国一律、あらかじめ通知させていただいている単価でお願いしております」
「マ…マジで言ってるのか?! それじゃあ、うちは大赤字になっちまうじゃないか!」(汗)
「そう言われましてもねぇ、当局からのキツイお達しで、どうにもならんのですよ」
「何だその素っ気無い態度は! アンタ、うちがどれだけ接待してやったと思ってるんだ!」(怒)
「私個人としては何とかしたいと思っているんですが、何せ当局からのキツイ…」
つまり、事後調整を「しない」のではなく、「できない」のだと言い訳できるわけ。「うちだけは特別だろう」なんて思っているGS経営者がいるかもしれないが、なかなか厳しいんじゃないだろうか。事後調整を当てにして安売り量販に励んでいる系列店々主さんは、悪いことは言わないから、きょうからでも市況是正の先頭に立って、採算価格で売るようになさってください。
経産省は今後、元売が給油所に卸価格を通知する際に、その内訳や理由をきちんと説明するよう求めたりするなどの対策を講じるとのことだが、是非とも“卸価格のブラックボックス”である100パーセント子会社への監視を強化していただきたい。100パーセント子会社が、今後採算販売に率先すれば、大半の系列店は事後調整を廃止することに納得してくれるだろう。もっとも、元売大手の一社は、毎日新聞の取材に対し、「卸価格は適正につけており、国際水準よりも安い。納入後の値引きは非系列店の安売りに系列給油所が対抗せざるをえないことなどが背景にある」と反論したそうだ。この期に及んでもなおPBを悪者扱いしている姿勢には苦笑するほかない。

セルフスタンドコーディネーター 和田 信治

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