vol.686『インスタ映え/忖度』

年末恒例の「2017年ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞とトップ10が今月1日に発表され、年間大賞は『インスタ映え』と『忖度』に決まった。

“インスタバエ?”インスタントラーメンにたかるハエじゃないよ、お父さん。SNS「インスタグラム」に写真をアップロードして公開した際に、食べ物、ファッション、場所など、とにかく見栄えがいい、映えるもののことである。自分がいま居る場所や、食べようとしているものを、見知らぬ人に知らせるという感覚が私には理解できないが、とにかく、スマホを持っていればだれもが“カメラマン”になれる時代。膨大な画像・映像が世の中に垂れ流されている。

果たして、ガソリンスタンドという場所は『インスタ映え』するのか。「ガソスタ インスタ」などと検索すれば、ばぁ~と写真が出てくるが、「いいね!」と言いたくなるような写真はそんなにない。ちょっとオモシロかったのはこんなの。https://instagrammernews.com/detail/1541964191765977310

ずいぶん前に、このコラムでも紹介した「ガソリンスタンド・ノート」というサイトがある(http://g-stand.com/album/archive.html)。松村静吾という人が、建築物としてのガソリンスタンドに魅せられ、まさしく『インスタ映え』しそうなGSの写真を紹介していたのだが、2013年12月を最後に更新されなくなってしまった。まあ、GSは減り続ける一方だし、まして、松村氏が好んで撮影した、意匠をこらした個性的なGSは“絶滅種”に近い存在となっているので仕方ないことではある。私自身は、GSとは“給油ができればそれでよし”との考えの持ち主だが、いまの時代は、機能性だけを追い求めるのではなく、面白みとか可愛らしさのようなものも必要なのかもしれない。ただ、業界人に限って言えば、「いいね!」したくなるのは、安売り店の看板が適正価格を表示している情景なのだが…。

“え、サンタ君?”違うってば、『忖度』だよ、お嬢さん。そもそも、「そんたく」って読めるかい? 今年のセンター試験に出るかもよ。「忖」は、りっしんべんがあるので、人の心を推測することで、「度」は「たく」と読む場合は「はかる」ことを意味しているそうだ。ゆえに『忖度』とは同じ意味を持つ文字を組み合わせて、それを強調しているというわけ。空気の読めない人には到底できない芸当なのだ。

『忖度』が流行語に選ばれたそもそもの出来事については論じるのも馬鹿馬鹿しい。時の権力者の妻や友人が関わっている案件に、何の気遣いも手心も加えない役人がどこにいるんだよ、というのが大方の国民の感覚だろう。かつてGS業界にも、元売の量販志向を特約店が『忖度』する代わりに、特約店の要望を元売が『忖度』してやるという麗しい関係があったが、いまはもう流行語どころか死語になりつつあるようだ。「いや、一部の販売店にはいまだ『忖度』がなされている」という告発もあるようだが、事後調整漬けにされたGSに未来はない。

なんだか『忖度』って、悪いことをすることのように取られているが、相手の気持ちを推測するだけで、その先どうするかは関係ない。言うまでもなく、私たちが『忖度』しなければならないのはお客様であり、何事も『お客様ファースト』であるべきなのだが、だからといって、赤字で売り続けるわけにはゆかない。利便性や継続性といった要素も加味しながら、「このあたりで勘弁してください」というこちらの気持ちを『忖度』してもらうしかない。

今年は何カ所ぐらいのGSが潰れたんだろうか。来年のいまごろ、うちの店は生き残っているだろうか。そろそろガソリンが儲かる時代が来ないかな~。“ねえねえ、ガソリンってリッターあたり幾らぐらい儲かるか知ってる?”と尋ねられたら、ブルゾンちえみのように、クルッと振り向いて『35円!』とこたえてみたいものですな。

 

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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