vol.714『百貨店』

名古屋の老舗百貨店「丸栄」が、先月末をもって閉店した。創業75年、前身の呉服店まで遡ると403年の歴史に幕を下ろした。売上高はバブル期の1992年に記録した約825億円をピークに年々減少、昨年は約169億円まで落ち込んでいた。そこへ止めを刺すかのように、昨年「震度6強以上で倒壊、崩壊する危険性が高い」との耐震診断結果が下されたため、かつては西日本最大の売り場面積を誇った店舗を完全閉店し、取り壊すことになった。

かつて「小売りの王様」だった百貨店だが、人口減少や消費低迷に加え、郊外型の大型商業施設やインターネット通販に顧客を奪われ、各地で不採算店の閉鎖が相次いでいる。日本百貨店協会によると、全国の百貨店は1999年の311店舗から、現在は220店舗にまで減少。売上高も91年の計9兆7千億円をピークに減少傾向が続き、ここ数年は計6兆円を割り込んでいる。

危機感を抱いた百貨店業界では2000年以降、経営統合の動きが加速した。西武百貨店とそごう、大丸と松坂屋、三越と伊勢丹が次々と統合。店舗の統廃合によって販売力強化を図ってきたのだが、依然として状況は厳しい。2016年からの2年間だけでも全国の百貨店10店以上が閉店し、今年度も「丸栄」をはじめ6店の閉店がすでに発表されているという。

石油業界はすでにこれ以上できないというところまで統合が進んだ。このたび、出光興産と昭和シェル石油の統合もようやく目途が立ったと報じられているが、実現すれば、JXTGと新会社とで国内のガソリン販売シェアの8割を占める。“もう安値玉なんか出てきませんよ”と仰る方もいるが、そうならそうで適正マージンを乗っけて売るだけのこと。むしろ市況が安定してくれたほうが良い。安く売っても販売量が伸びないことは、この数年間で学習済みだ。

これまでずっと、百貨店業界の活性剤はバーゲンだった。結局、値引き販売しないと客は足を運んでくれない。それでも、戦う相手が同じエリヤでしのぎを削る店舗だった時代は、それがエリア全体の集客をもたらしていたが、いまは全国の百貨店が束になってかかっても太刀打ちできない巨大な相手─ネット通販が立ちはだかっている。バーゲンなんかやっても、自分の首を絞めるだけで、何の徳にもならない。

“その点、ガソリンは通販で買えないからまだマシか”と安心できるかといえば、そうでもない。将来、ガソリンという商品が必要でなくなるかもしれないのだから、置かれている状況はGS業界の方が深刻といえるかも。一刻も早く安売り競争をやめて、次世代への再投資が可能な体力を蓄えることに注力すべきだ。

ところで、先月30日、私も家内と「丸栄」に行ってみた。行く気など無かったのだが、たまたま時間が空いたのと、老舗百貨店の最終日がどんな様子なのか、話のタネにと思い、行くことにしたのだった。閉店まであと3時間ほどだったので、食料品の棚は商品がほぼなくなっていた。一番印象に残ったのは、どのフロアにも、臨時の貴金属コーナーが設けられていたこと。“せっかく来たのだから記念になる物を”ということで財布の紐を緩めてくれるのを期待した戦術だとすればあざといな、と思っていたら「70㌫オフ」の値札が掲げられたショーケースを食い入るように見ている家内の姿が…。(苦笑)

“いよいよ閉店まであと2時間を切りました!最後の特別価格でご奉仕させていただきます!”と声を張り上げている店員さん。商品にハゲタカのように群がるお客さん。報道されているようなノスタルジーに浸っている人はほとんどおらず、敗走する軍隊のような混沌とした雰囲気が漂っていた。人混みが苦手な私には1時間が限界。息子のためにとかばんを一個買っただけで帰ってきた。帰りの電車の中で「そういえば、おれたちの結婚指輪は丸栄で買ったんだよな」などと話しながら…。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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