vol.717『命に関わる危険な暑さ』

毎日、テレビのトップニュースは「猛暑」。レポーターが街頭で、「手元の温度計では40℃を越えています!」。待ち行く人にマイクを向ければ、「もう溶けそう」、「肌が痛いです」─。何せ“命に関わる危険な暑さ”と報じられる異常気象で、連日、熱中症で死亡する人が跡を絶たない。過去の統計から推定して、千人を超えるのは確実と見られている。一昨年の熊本地震の死者数が267名、先日の西日本豪雨の死者数は、225名(7月20日時点)だから、これはもうりっぱな「災害」であって、国は国民に対して何らかの避難措置や制限措置を設けるべきとの意見もある。

それにしても、この暑さ、尋常ではない。何でも、日本列島上空で、太平洋高気圧とチベット高気圧が重なり、厚い布団を2枚重ねにしている状態が続いているからなんだそうだが、専門家のほぼ一致した意見は、「地球温暖化の影響」。北極海ではこの30年間で海面の氷の40㌫が消失した。このあいだも、グリーンランド沿岸に推計1100万㌧の氷山が迫ってきて世界に衝撃を与えた。世界中の学者が、「地球」という大きな家のエアコンが故障しつつあると警鐘を鳴らしているが、経済活動優先で温暖化ガスの排出権を売買しているようでは世界的な対策は難しいだろう。

気温が上がると売上が伸びる業界は多々あるが、GS業界もその一つとされてきた。本来なら徒歩や自転車で行けるちょっとした外出でも、自動車を使う人が増える。おまけに、エアコンをガンガンかける。ガソリンの消費量はグングン伸びる…。少し前まではそんな感じだったかもしれないが、最近ではそれほどの勢いはない。そもそも、これだけ暑いと、出かけること自体やめてしまう人が多いんじゃないだろうか。

夏は油外商品の書き入れ時とも言われているが、この暑さの中でのワックがけは、まさに“命に関わる危険な作業”といえるかもしれない。熱中症は単なる脱水症状ではない。医学的には「暑熱環境下にあって体温を維持するために生じた失調状態」であり、頭痛、失神、嘔吐など幾つかの症状が重なり合って生じ、放置しておくと多臓器不全を引き起こす危険性がある。スタンドクルーの皆様、くれぐれも無理なさいませんよう、気をつけて作業なさってください。

冷房の効いた部屋でこのコラムを書いているあいだにも気温は上昇し続け、埼玉県・熊谷市では41.1℃を記録、日本歴代最高を5年ぶりに更新した。また、東京都・青梅市でも40.3℃を記録し、東京都内では観測史上初めての40℃超となった。2年後のいまごろ、関東圏ではオリンピックが開催されるが、日本体育協会の「熱中症予防運動指針」によれば、31~35℃度は「激しい運動は中止」、35℃以上だと「運動は原則中止」となっている。2年後の日本の気候がどうなっているかわからないが、もしこの暑さに見舞われたなら、まさに“命がけ”の競技になるだろう。

その前に心配なのが、来月5日に開催される全国高校野球選手権。すでに、地方予選大会で選手や観客がバタバタ倒れている。先に述べたとおり、この暑さは災害ともいえるレベル。本当にこんな環境のもとで試合をさせていいのだろうか。国内には、京セラドームをはじめ、りっぱなドーム球場が幾つもあるのに、何で甲子園球場で?どうしても甲子園でなくちゃいけないのなら秋に順延すればいいんじゃない?死人が出てからでは遅い。

とにかく、今回の猛暑は日本人の生活や慣行を見直さざるを得ないほど大きな影響を与えている。“クーラーは体に悪い”とか“塩分の摂り過ぎは駄目”などと、いままでのルーティンを頑なに守っていると命取りになる恐れがある。こうした気候変動を見越したわけではないだろうが、GS業界は20年も前にセルフ化することで、比較的安全に、長時間、店舗を運営することができている。恵まれているなと思う。屋外で汗まみれになって働いている人たちを見ると、いささか申し訳ない気持ちになるが…。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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