vol.718『やってられないよ…』

猛暑から酷暑も通り越して、「極暑」なんだとか。「凶暑」とか「暴暑」なんて言ってる人もいる。今月3日、名古屋でも観測史上最高となる40℃超えを記録した。東京23区及び100万人以上の大都市では初めてのことだという。こんな暑さの中で荷物を届けてくれる宅配便のドライバーには頭が下がるが、そんな彼らの働きを貶めるような不祥事が明らかになってしまった。

『ヤマトホールディングスは、子会社のヤマトホームコンビニエンスの法人向け引っ越し事業で代金の過大請求があり、約4万8千件、総額約17億円にのぼったと発表した。過大請求は確認できた2016年5月以降の約2年間で全受注の4割に及ぶ。記者会見したヤマトHDの山内社長は組織ぐるみでの不正を否定したが、業績を引き上げるために意図的に行われていた疑いもあるという』─7月24日「毎日新聞」

その後の調査で、過大請求分は過去5年間で31億円に拡大した模様。ヤマトHDは、2017年に宅配便ドライバーに対する大規模な残業代の未払いが発覚し、構造改革の真っただ中にある。昨年10月には宅配便の一般消費者向けの基本運賃を27年ぶりに値上げし、アマゾンなど大口顧客に対する運賃引き上げも進めた結果、業績はⅤ字回復。GS業界も、これに倣って適正価格への値上げに勇気をもって取り組むべきではとこのコラムでも書いたのだが、こんなズルをしていたんじゃあ信用はガタ落ち、危機的状態といわざるを得ない。

気の毒なのは、法人・個人の別無く、命の危険すらある暑さの中で働いているクロネコヤマトのスタッフたち。“お前ら、運賃ぼったくってんだろう”などと心ない中傷を浴びせられた日には、モチベーションはダダ下がりだ。会社がやっていたことはけしからんことだが、彼らにその責めを負わせるのは酷というものだ。

一方、水増し請求された会社側について言えば、見積書と請求書とをつき合わせて、整合性を確認したのかという疑問が残る。個人の引越しであればシビアに見るものでも、会社のそれとなるとろくにチェックせずに支払ってしまうということは多々あることだ。食品、建物、機械、自動車など、わたしたちのまわりにある様々なものが、偽装されたり、不良だったりするとんでもない社会になってしまった以上、何事も疑ってかかるようにしないと、馬鹿を見るばかりだ。

その点、GS業界は正直な業界だと思う。ぼったくるようなことは一切無く、悲しいぐらいの薄利で“奉仕”している。儲けは石油元売がしっかり取っているので、系列GSはただただ量を捌くだけという存在に堕してしまっているし、独立系GSの中には、文字通りの水増しでもしてるんじゃないかと思えるような価格で売り続けている者もいて、相変わらずの“量販熱中症”が全国各地で発生している。ちなみに愛知県・日進市は、8月5日現在、軒並み137円。阿呆らしくて付いてゆけないので、当店は143円。それでも決して暴利を貪ってはおりません。

それにしても、適正価格というものはいったい何なのかと思う。それは市場が決めると言うが本当にそうなのか。そもそも「市場」って何?売る側と買う側の思惑が交錯し、そこに貪欲や不正が働き、高くなったり、安くなったりする気まぐれで不確かなものに、世界中の人たちが振り回されている。今回のヤマトの問題に限らず、名だたる一流企業が不正を不正とも思わずに容認し続けてきた背景には、この「市場」という得体の知れないものにおもねようとして“少しでも高く”“できるだけ安く”という強迫観念のようなものがあったのではないか。

まあ、そんな観念的なことを書いたって詮無いことだが、とにかくこの暑さの中で一生懸命働いている人たちが“もうやってられないよ!”と愛想を尽かす出来事が次々に起こっている。そのうち、この異常気象の影響で我慢強い日本人も遂に理性をコントロールできなくなり、暴動とか一揆が起きるんじゃないかと心配している。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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