vol.723『売上高が増加したけれど』

帝国データバンク(TDB)は9月28日、ガソリンスタンド業者8581社を対象とした実態調査を行なった結果、2017年度売上高合計は、前年度比7.2%増の8兆8660億3300万円となり、3年ぶりの増加となったと発表した。

販売数量が漸減する中での売上高伸長は、やはりガソリン価格の値上りに負うところが大きいと多いと思われる。今回の結果を、年商規模別で見てみると、年商100億円以上の企業は87㌫以上が、年商50億円以上100億円未満の企業でも90㌫以上が売上を伸ばしているのに対し、年商1~10億円の業者では31㌫、1億円未満の業者では15㌫にとどまっている。要は、店舗数が多い大手企業がけん引役を果たしたのであって、GS業者の9割近くを占める中小・零細業者の大多数は、売上が依然として減少か、せいぜい横ばいで推移しているということだ。

2018年度になってガソリンの店頭価格は一段と値上りしており、売上高は堅調に推移すると見られている。何せ、現時点で前年同期と比べて20円ぐらい高いのだから、少々減販しても売上は増加することだろう。問題は「…で、幾ら儲かったの?」という問いに対する答えだろう。

例えば、愛知県の主立った都市では、レギュラーガソリン価格はまだ140円台半ばで膠着したままだ。現在の仕入価格と照らし合わせれば、儲かっているとは言い難い。日進市には月販約1000㌔を誇る大型セルフがあるが、実売価格はただいま140円。売上は伸びているかもしれないが果たして…。

トランプ大統領が、ほぼ全世界を敵に回すが如く吼えれば吼えるほど、原油価格は上昇する有様で、恐らく来週も仕入れ価格は一段と上がることだろう。この局面をどう乗り切るか。TDBのレポートは次のように結ばれている。

『ガソリン価格の高騰は消費者の「買い控え」を助長し、価格競争の激化で収益環境の悪化を招く恐れがある。ガソリンスタンド経営業者の倒産件数は、2018 年度累計で前年同期比200.0%増の15 件と、前年度を上回るペースで推移している。今後は人件費の高騰も重なり、経営環境が一層厳しくなることが想定される』─。

まあ、わかりきったことを書いているわけだが、このわかりきったことにいつまで経っても対処できないまま、この20年余りのあいだに、日本のGSは半分ぐらいに減ってしまった。省エネ化の流れはもう変わることはない。「買い控え」を恐れていても仕方ない。この業界は、ずっと売上高、すなわち販売量にこだわってきたけれども、そろそろ“中身”のことを考えなければならない。

繰り返しになるが、3年ぶりの売上増加は、専ら販売単価の上昇によるものであり、消費量が回復したわけではない。120円の店頭価格で10円のマージンを得ていた時と比べて、150円でも10円だった場合、30㍑売ったら売上は25㌫アップでも儲けは同じ30円。いや利益率は1.7㌫下がってしまうではないか。そのうえ「買い控え」を恐れて、頼まれてもいないのに利幅を減らせば、何をやっているんだか分からなくなってしまう。「元売も商社も、値上げに乗じても儲けているんだから、末端(GS)もマージンとってもらえれば僕らもありがたいんですがねぇ」とは、知り合いの業転業者さんのつぶやき。

こういう話をGS業界以外の人に話すと、大抵“何でそんなことをいつまでも続けてるの?”と尋ねられる。“さあ、何でかねぇ…あんまりあんたらがガソリン高い、高いってうるさく言うからじゃないのかねぇ…”と言い返す自分も、やっぱり業界人の端くれだなと思ったりもする。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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