vol.725 『税金高いから車いらない』

「日本の自動車関係税は世界でとんでもなく高いんです。自動車工業会の会長としてこの問題を政府に陳情しても、まるで業界団体が政府に業界の応援をお願いしているような構図で報道されるんです。そういう見せ方の報道をされると『こないだ決算発表見たけど、自動車メーカー各社はもうかっているじゃない。税金いっぱい払えばいいじゃないか』と思う人が多いと思うんです。でも実態は違いますよね? 税金を払わされているのは、自動車メーカーじゃなくて、自動車ユーザーです。私たちはユーザーの代わりにお願いしているんです。自動車ユーザーって国民でしょ? 政治家も、国民である自動車ユーザーのことをもっと真剣に考えていただきたい。自動車ユーザーから取るのは、取りやすいからです。取りやすいからとあれもこれもといろんな税金を積み上げていった結果、世界的に見てどうなのって言うと、世界でも異常なほど高くなっています。例えばフランスは保有税はゼロです。米国との比較では31倍。そういう事実を皆さん報道してください」─。

これは自工会の会長として異例の2度目の就任となった豊田章男会長が昨年、自動車業界誌の取材に対して語ったものだが、確かに自動車には様々な税金が課せられている。例えば、ガソリン車には取得するときに「消費税」と「自動車取得税」がかかる。車を保有するだけで「自動車税」、車を利用するため新規登録や車検をすると「自動車重量税」がかかる。そして、走行するためにガソリンを使うと、「揮発油税」と地方自治体に譲与する分の「地方揮発油税」と消費税もかかる。このようにガソリン車には6種類の税が課されている。

自動車税が創設された1960年頃は、自動車は裕福な人しか持っていなかった。その当時の発想から、自動車という財産を持てるほどの人は税金を支払えるだけの経済力のある人だからというわけで、財産税的にかけられることになった。しかし、いまや自動車は富裕層だけのものではない。少しでも税金の安い車にしようと軽自動車に乗り換えたうえで、1円でも安いガソリンを入れようと生活防衛に走る人々が“自動車ユーザー”の圧倒的多数を占めているのである。こうした現状から、冒頭の豊田会長の発言が出てきたといえよう。自工会は2019年の税制改正に向けて、消費税引き上げによる自動車ユーザーのさらなる税負担増を回避することを訴え、「自動車税」を軽自動車税並みに減税することや「自動車重量税」の税率引き下げ、「エコカー減税」などの延長を要望している。しかし、それらの要望どおりに各種税率を引き下げると、1000億円単位で税収が減ってしまうため、財務省と総務省は強く抵抗している。

GS業界にとっても、この問題は重要である。国内の自動車台数は、1996年に7000万台に乗ったが、それから8000万台に到達するまでに18年もの期間を要した。明らかに飽和状態であり、自動車関係税の問題で手を拱いていると、いよいと減少局面を迎えるかもしれない。当然その影響は、GS業界に及ぶ。折りしも、原油価格の高騰を受けて、ガソリン価格は160円をうかがうところまで来ているが、こうなると“もう自動車持つのはやめよう”という動きになることは必定だ。実際、トヨタ自動車は先ごろソフトバンクと新会社を設立し、AIを駆使したライドシェア事業に本格参入することとなった。「工業製品で“愛”が付くのは自動車だけ」と、自動車への愛着を語る豊田社長が、「今後自動車は単なる“端末”に過ぎなくなる」と言い放つ孫社長とガッチリ握手する姿を見て、トヨタも生き残りに向けて必死なのだなと感じた。

IT企業群が日本の自動車社会のイニシアチブを握ろうとしているのを、エネルギー企業はただなす術なく見守っているだけなのだろうか。いよいよ来年10月から消費税が10㌫に引き上げられるが、石油関係税に対する二重課税問題はどうするつもりなのだろう。人手不足による倒産が過去最多のペースで進んでいるそうだが、GSの無人化を含めた省力化への動きはどうなっているのか。外国ではガソリン配達など新しいビジネスが誕生しているが、規制緩和に向けてどんな取り組みをしているのだろうか。石油業界の動きがまるで見えず、聞こえてこない。というか、そもそも動いているのかしら。

  セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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