COCと独立経営<638>タイヤ交換よりティッシュ配り – 関 匤

石油連盟の統計情報に「石油製品バランス」があります。製品別に時系列で、生産、輸入、販売、輸出、在庫の推移を見ることができます。生産+輸入が「供給量」、販売+輸出が「出荷量」、これに月末在庫で需給状況を判断できます。

現時点で一〇月実績が出ています。ガソリンについて今年度4―10合計を計算してみました。供給量が前年同期比▲1.9%に対して、出荷量は▲2.6%。月末在庫は166万㌔㍑でプラス4.9%です。

生産自体は5%近く減少しています。北海道胆振地震で出光製油所が停止したことも影響していると思います。輸入が倍増して供給量の歩留まりを増やしました。出荷量の減少が供給のそれを上回る「精販ギャップ」であり、余剰在庫の状況で11月の原油下落局面を迎えたことになります。

お陰でPBも一息つけたというか西日本では“ゴンタ復権”も見られますが。この需給傾向は今年だけの特殊要因ではありません。過去3年間、同じように出荷減少が生産を上回っています。

資源エネ庁が、高度化法の精製削減で供給縮小の環境を人為的に作り上げました。しかし実際の市場の縮小に追いつかないと言えます。ガソリン輸出がなければ在庫はさらに120万㌔㍑アドオンされます。

10年前の2008年度と比較してみました。08年度はガソリン価格が史上最高値になり、後半はリーマンショックによる景気悪化で需要が大きく減少した年です。この年と比較しても4―10月で10%強も減少しています。

ここから言えることは、ガソリン市場は生産縮小が供給縮小に追いつかないまま、ひたすら縮小スパイラルの谷底に向かっていることです。

最近、系列有力店による「ガソリン集客イベント」が目につきます。市況維持で粗利が取れるようになってティッシュ予算が出るのでしょう。

先週9日の日曜日にこんなことがありました。一気に冷え込んで、COCの某SSに朝からスタッドレスタイヤ交換客が来ます。スタッフが悲鳴を上げる多忙ぶりに、社長は異常を感じました。お客さんたちに聞いてみたら「いつも行くSSがイベント中で作業をやってくれない」でした。

カーケア商品の立派な告知ボードやサインを掲げながら、ティッシュ配りが忙しくて作業をしてくれなかったそうです。もう1カ所の有力店SSは「作業スタッフが休んでいる」の体たらくでした。

ティッシュ配る方がタイヤ交換より楽しいのでしょう。カーケア告知しながらタイヤ交換に来店するお客さんを無視する。これって逆でしょう。

ガソリンは10年後にさらに20%以上減少するでしょう。「無くなる商品」です。一方、タイヤはEVや自動運転になっても無くなりません。飛行してもタイヤは必要です。「存続する商品」です。そして作業信頼性が不可欠です。カーケアの立派な告知をしながら作業対応しないSSは、さぞやお客の神経を逆なでしたことでしょう。

ガソリンを主体に展開してきたマーケティングですが、入り口商品と集客方法を考え直す時に来ていると思います。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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