COCと独立経営<647>同系列内の顧客争奪 – 関 匤

系列店から仄聞するに、再編元売系列における「系列内競争」が想像以上に大変なことになっています。

立地・設備にすぐれたセルフ店が同系列顧客を吸収して増客する一方、減販に見舞われるSSもあり悲喜こもごもの状況のようです。

以前も書きましたが、同一商圏に同一ブランドが倍増したのです。“ブランドSS過剰”になったために、顧客の選択肢が一気に広がりました。ならば最適のSSを利用するだけです。過去の元売再編時にも起こったことであり、十二分に予想されたことでした。

元売再編は、初期には比較的似た者同士の合併で始まりました。日石三菱、エクソンモービル流統治を理解していた同士のエッソ、モービル、ゼネラルなどです。下世話な言い方をすれば“恋愛結婚”でした。

しかし最終段階に入ると、JXと東燃、出光と昭シェルとマーケティング思想で方向性の異なる会社が結びついています。仲人の資源エネ庁が強引に進めた“政略結婚”に映ります(私の個人見解ですが)。

マーケティング思想が異なる同士ですから、ブランド統合後のリアクションも大きくなります。ガソリン市場の成熟化もそれに拍車を掛けています。成長期で元売が多数あった時代ならば、他社からシェアを奪う戦略もあったでしょうが、現状は同系列内の“間引き競争”の様相を呈しています。

もう一つ系列内競争に拍車を掛けているのがカードです。同一ブランド店で値引き対応を約束しています。そこにポイント販促が絡んでくると顧客が流れます。自助努力でカード化した顧客が同系列SSのエサになってしまい、地団駄踏んでいる経営者も少なくないでしょう。

“同一商圏のブランド過剰”は誰でも読めていました。ならば、系列店会や全石連は予想される事態に対して何らかの対元売行動を起こしたのでしょうか。

統合に対して公取委は「意見」を求めていました。異議申し立てした人は何人いたのでしょうか。それどころか「再編万々歳」を合唱していました。だから「系列内競争問題」も今さらの感があります。

同じことがコンビニ業界でもあります。既存店の鼻先に出店する事例です。この場合、距離は近くても顧客の流れが違うという商圏の読みや、商品力で競合他店を圧倒しうるという合理的判断があります。もう一つは、既存店が契約満了を控えて再契約の意思がないため、空白回避のために新店を出店するケースもあります。

そして本部はFC契約を毀損する行動を取りません。必ずFC店の異議申し立てに直面するからです。過去に痛い目にあってFC店との関係を何度も修正してきたからです。

元売と系列店の関係はFC契約にあります。しかしコンビニとは似て非なる運用と長い商慣習によって、契約の観念よりも元売と系列店との個別の裁量が優先しました。事後調整はその象徴です。異議があっても人間関係でまるめこめました。

元売は、明らかに過去を断ち切ろうとしています。一方、系列店は想像以上にブランド意識が強いようです。市場競争の旗印にしてきたからでしょう。元は商売敵の他系列との同居も許せないでしょうし、まして系列内競争の顧客流動です。

全ては系列制度が始まって以来の、FC契約の裁量運用の延長線にあると考えます。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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