COCと独立経営<672>サウジ生産回復を祈りたい – 関 匤

9月19日現在、千葉県内で約3万軒が停電のままです(東京電力パワーグリッド発表)。台風15号直撃から10日の状況です。

電柱の倒壊と倒木等によって電線網が寸断され、随所で道路が塞がれて作業車が現場に辿り着けない事態となりました。

千葉県は火力と新エネルギー含めて発電量は日本一です。皮肉なことに最大の電源を持ちながら、送電という「物流」が機能不全になりました。

テレビで倒木除去作業の様子を見ましたが、足場の悪い山中の傾斜地で作業員と自衛隊員が必死で活動していました。山林は所有者の了解を取ってから入山するので手続きも大変でしょう。

何年か前、田舎で関電社員が山林保有者を訪ねて、送電線に絡む枝を切りたいと要請していました。恐らく東電も日頃からこういう送電対策をこまめにやっていたはずです。だから責任を論じるメディアには賛同できません。

さて、原油市場でゾッとする事態が起こりました。サウジアラビアへのドローン爆撃です。燃え上がる油田の動画に背筋が凍りました。素人が操作できるオモチャのような飛行体が570万BDの原油供給を止めてしまいました。COCの会員からも“どうなる?”と問い合わせが来ましたが、私ごときに聞くだけ無駄です。

私が知る第四次中東戦争、湾岸戦争、イラク攻撃などは正規軍同士の大規模戦闘でした。しかし、サウジ油田攻撃は“見えざる敵”です。イエメンのフーシ派と言われますが、イランの関与、イラクの反政府勢力などか書いている段階では、相手を特定できていません。

原油市場は瞬時に反応して、WTIは前日の54・85㌦から62・9㌦に吹き上がりました。サウジはちょうどファリハ・エネルギー相が更迭されて、アブドラアジズ王子に代わったばかりです。慣れない舵取りで供給問題が起これば、独立系SSの供給が絞られるのかと心配になりました。

しかし、新大臣は「11月までに1200万BDへ回復」と公表しました。この情報で翌17日のWTIは3㌦以上値を下げ、18日も続落しました。サウジの公表通りの回復を期待するしかありません。間違ってもサウジ軍がイエメン反政府勢力を攻撃しないことを祈っています。

今や産油国と言えば米国です。2018年に世界一の産油国になりました。19年も生産を伸ばしています。EIA週報で計算すると、18年の生産量は1084万BDでしたが、19年は9月6日までの平均で1213万BDです。前年比112%、増産量はサウジの停止減産分の4割に相当します。

稼働リグは減少傾向です。エクソンモービルなどメジャーがシェール市場に本格参入してリグ当りの効率が高まっています。WTI原油は50㌦台前半の弱含みでしたが、18日現在の58㌦前後なら稼働リグが増えてさらに増産となるでしょう。

消費増税を控えているので、値上げ続きの10月入りは増税で高値感が増幅されてしまいます。それから、もしサウジの公表通り生産が回復しない場合、中間品が心配です。コスモ石油以外の元売はIMOに設備対応していないので、ローサルC重油生産基材に中間品が流用されます。

ただでさえ今冬の中間品は心配でした。独立系は大都市部よりも地方都市に多いので、底堅い灯油需要があります。また、軽油の直売もあります。COCでもIMOがらみで皆さん対応を考えています。しかし、原油の供給問題はコントロールできません。

アラーの神にお祈りするしかありませんが、スンニ派とシーア派の争いなのが悩ましいところです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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