COCと独立経営<545> エネルギーは異業種混戦争奪戦 -関 匤

新年のテレビ番組で池上彰さんが、拡幅なったパナマ運河の経済効果を解説していました。焦点は、メキシコ湾岸のシェールガスでした。LNG積載能力で従来の五倍以上となり、一気にコスト競争力が高まりました。番組中、船舶会社の社長はLNGを経営戦略の柱にあげていました。
そしてルイジアナからのシェール由来LNG第一船が新潟上越に到着し、九万㌧を中電火力発電所に揚陸しました。米海軍と海上自衛隊の制海権下の安全航海ですから、LNGでも脱中東が進むことでしょう。
直近国のロシアとの経済協力が始まれば、米露で対日ガス輸出競争となるでしょう。同時に国内エネルギー需要で「ガス化」が拡大するはずです。
一方、自動車です。ガソリンで発電するEV・日産ノートe-powerが売上げ快進撃ですが、日産は昨年、燃料電池車FCVでも新機軸を発表しています。経済産業省主導のFCVは水素ステーション貯蔵の水素を補給するものです。ところが日産は、エタノールを車中で改質して水素を発生させる構造です。設計思想が根本的に異なります。
実用化されるとしたら、安全性、簡便性で政府主導のFCVを凌駕します。石油精製の識者の話では、水素ほど危険な物質はなく、圧縮された状態で針の穴でも生じれば殺人光線が放射されるうえに、大気中に放出、拡散されれば大爆発を起こすそうです。製油所内だからこそ保管責任が取れるが、市中に分散配置されて管理責任も分散すれば何が起こるか分からない、そうです。
また、製油所に置かれた水素は精製過程で改質の化学反応に使って付加価値製品を作るための重要な原料であり、単に燃焼させるのは経済合理性にも逆行するそうです。
片や、日産はエタノール100%か水50%混合です。エタノールは消毒用にポリ容器でトイレに置かれています。石油製品に比べて管理が容易です。ホームセンターやコンビニで販売されてもおかしくありません。
日産に連動したのではないでしょうが、年が明けて、東レやサッポロHDがタイでバイオ燃料プラント投資を発表しました。先のパリ協定を受けての動きです。日産の祁医術は国際的にも理にかなっているといえます。実際、日産ノート発売時に試乗したCOC会員は、ディーラーから「将来は灯油かバイオ燃料も使う」と言われたそうです。
新年早々嫌な話ですが、いよいよ「石油の世紀」が終わり始めたと予感しています。
二強元売再編の公正取引委員会審査を「甘すぎる」批判しましたが、案外、公取委は石油の先を見据えた上での判断かもしれません。2001年のEMGや2008年の新日石・新日鉱統合時に、公取委は「競合元売の存在」を主な理由として承認しました。今回は元売に競合者は存在しません。その割に審査が甘いと思いました。
しかし、公取委は灯油・重油に対するLNG、ガソリン・軽油に対するバイオ燃料を「有力な市場競合者」と考えているのかもしれません。
昨年の電力、この四月からのガス自由化で、エネルギーは業界内競争が「異業種混戦の争奪戦」に突入します。石油で幾ら大きくなっても無意味な時代の始まりです。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局

 

 


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