COCと独立経営<717>セルフは増えているが飽和段階か – 関 匤

SS数が減少を続け、ガソリンが減販する中でセルフSS数は依然として増加しています。

石油情報センターの統計の20年3月末のセルフSS数は前年比で220カ所増加しました。前年度に一万の大台に乗ったのですが続伸です。

SS数に占めるセルフSSシェアは34・8%です。販売シェアで見れば、恐らく70%に達していることでしょう。神奈川県と埼玉県はSSの5割強がセルフになりました。両県のセルフ販売シェアは90%近いと想像されます。

何度も述べますが、1998年のセルフ化当初、元売や業界団体は「セルフは日本の商慣習に合わない」、「高齢者や女性はセルフを嫌う」だから普及しないと連日叫んでいました。現状を見るに、業界で大声を叫ぶ人たちは信用できないとつくづく実感します。

元売は今や、「EneJet」、「プリテール」、「ピュア」などセルフ専門業態を展開しています。20年前の業界紙で社長さんたちがセルフ反対を叫んでいたことを思い返すと、実に面の皮が厚い人たちだなと思います。

一方、現在の市場で販売シェアでは片隅に追いやられた感のあるフルサービスSSですが、都市中心部で優良法人顧客を抱えているSSはともかくとして、どっこい生きていると感じます。

元売の系列政策にあって、新設やセルフ改造投資をしない中小特約店やサブ店は放置されている感があります。逆にそのポジションがSSビジネスに多様性をもたらせているのかなと考えます。以前も述べましたが、ガソリンが数十㌔㍑でも店主がトップセールスで車を売りまくるSSもあります。顔が見えるフルサービスゆえのビジネスモデルです。

COC会員の本籍地もまさに中小特約店や系列サブ店にあります。今は御法度ですが、零細ゆえに仕切りが硬直化したがゆえに系列マークを掲げながら業転を買ったり、系列の販売プログラムを無視した結果、PBに転じたり商社ブランドを掲示するに至っています。

現在、独立系にあって仕入れの優位性は大きく薄れています。ならば市場のすき間にある、中小だからできる様々な小商いや、系列プログラムではなしえないレベルのカーケア収益をあげるケースもあります。

ガソリン市場縮小にあって、水面下でSSのビジネスはじわじわと多様性をみせつつあると思います。そしてセルフSSはそろそろ選別段階に入っていると思われます。とくに系列標準セルフは、元売の管理統制が強いだけに、いわゆる“レッドオーシャン”に入ると考えられます。

供給者の論理で動く元売にとって、ますますネットワーク戦略が強まるはずです。元売は製油所からSSまでのネットワークのガソリン販売効率を高める発想が強まっているはずです。立地・設備にすぐれたセルフSSにローコストな最適の運営者を配置する考え方です。

過去の失敗例から考えて、元売に利益業態を自己開発することはないでしょう。選別したSSに既に確立されたビジネスモデルのコンビニやFC系ビジネスを複合化する業態を展開するのでしょう。中期計画に出されたSSの将来イメージにそれが現れています。

セルフSSは増えてはいますが、そろそろ飽和状態かなと思います。日本の小売セルフサービスで先駆者であったスーパーマーケットは、誰もかれもが参入して出店ラッシュになった時代があります。そこで淘汰が起こって、「スーと現れパーと消える」と揶揄されました。セルフもスーパーと同じ段階に入ったと感じます。コロナ禍で前提条件が崩れた今こそ、中小SSから革新者が生まれることを期待しています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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