COCと独立経営<719>ガソリン輸入増勢とSSブランド -関 匤

昨年7月からコスモ石油がキグナス石油に供給を開始して以来、ガソリン輸入量が急増しています。

石連統計によると、昨年7月に輸入量が前年比160%となりました。その後、急増を続け、今年7月はさらに前年比173%とさらに拡大しています。1-7月の合計で前年比188%となり、2018年暦年の合計に匹敵します。

輸入数量を同時期の販売数量で割り返してみると、2019年は輸入比率が3.7%でしたが、20年は7.7%と倍増しています。この数字(シェア)は、石油自由化前ならエッソ石油とゼネラル石油を合併した規模に該当します。

また、国内販売は1-7月で前年比10%減、7月単月で6%減となっており、コロナ禍の特殊要因はありますが、構造的な縮小は誰もが認めるところです。相対的に輸入構成比が徐々に拡大していくと思われます。

対日輸出国は、数年前まで韓国が9割以上を占めていました。しかし、2019年から中国の輸入量が急増しています。10%前後だった輸入構成比が、昨年10月以降20%以上になっています。

中国は2010年前後の急激な経済拡大期に、国内需要に対して精製能力は3割ほど少ない精販ギャップにありました。国家プロジェクトで新鋭製油所の建設が進み、また軽質ロシア原油を使った「茶壷」という小型製油所が出現して、2015年頃にはあっという間に精販ギャップが解消されました。今年が最終年の第13次5カ年計画では精製石化の高度化が進められ、既存設備の高度化や新設プロジェクトが動いています。効率化と増強により年々中国の輸出は増加しており、今年1-6月はコロナ禍で中間品が腰折れしましたが、ガソリン輸出は前年比16%増の1千万KLに達しています。何度か書きましたが、中国だけでなくアジア全域で新鋭製油所が立ち上がりコロナ禍まで旺盛だった中間品需要に対して、連産品のガソリンは余剰が続いています。

一方、日本国内では資源エネ庁の政策誘導で精製が縮小されました。10月にはエネオス大阪製油所が精製事業を停止します。さらなる「廃止候補」の噂もあります。

この流れをみると、伝統的に堅持されてきた「消費地精製主義」が形骸化して、輸入が補完的な位置づけではなく存在感を強めるように思います。コスモ石油が精製増強しない限り輸入は供給戦略となりますし、大手商社や専門商社もビジネスチャンスとして輸入を継続しています。

こと石油流通に関して日本は豪州に近づいているようです。豪州石油市場の規模は日本の3分の1です。製油所が縮小されて、需要のほぼ半分を製品輸入しています。

興味本位に豪州のSS流通をウェブ検索してみたら日本語の「オーストラリア情報サイト」がありました。日本の3分の1規模でSSブランドは7つあります。あくまで主要ブランドであり「あとはその地域のローカルスタンドがあります」と書かれています。7ブランドのうち石油メジャーは3つ。あとは流通系です。「Freedom Fuels」というブランドがあります。出光興産の会社です。「ガソリン価格が比較的に安いです」と説明されています。国外では非石油ブランドで頑張っているようです。

流通系をブランドとしてカウントするのは欧米では当たり前のようです。英国でも30近いブランドを石油販売団体が認知しています。日本でも4分の1がPBであり、中には元売より認知度の高いブランドもあります。ウェブのガソリン価格サイトでは、商社やJAもブランドにカウントしています。消費者本位ならこうなるのでしょうね。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局

 


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