COCと独立経営<722>残存者利益が消えた新常態の販売 – 関 匤

石連統計の都道府県別販売量で8月実績があって、ガソリンは前年比▲10%でした。
9月は前年に消費増税前の仮需があった反動で、かなり悪い数字になっているはずです。COC会員に聞くと、前年比80-90%、中には70%台もあります。
10月は「増税の逆反動」がどういう数字になるのでしょうか。GoToトラベルで人と車が動き始めてはいます。
この逆反動を期待してか、またぞろ集客の値引きキャンペーンが系列有力SSで始まっています。ガソリン、系列決済ツール、ポイントカードと元売が売りたいものを対象に大幅値引きにティッシュ進呈です。
まあ販売活動は勝手にやればよいのでしょう。それより、先の都道府県別実績ですが、試しに4-8月を合計してみました。前年比86%でした。▲14%というのは、九州・沖縄・四国の需要が消滅したに等しい数字です。新型コロナの恐ろしさが実感できます。
統計の取り方が分からないのですが、首都圏、東海中京圏、近畿圏と大需要地をまとめてみると、東海中京と近畿は平均より上、首都圏が83.8%と平均を下回ります。首都圏の減販量は、福岡県の総販売量にほぼ匹敵します。
どうも市況が安い地域の歩留まりがよくて、高い地域は落ち込みが大きいと仮説を立てています。市況は“東高西低”の感がありますから。
と、数字をいじくっているのですが、4-8月でSS当り販売量を出してみました。前年と今年それぞれ3月末SS数で割りだしました。19年同期が137KL/SS、今年が120KLとなりました。
自由化以降、SSが激しく減少を続ける中にあって、こういう言葉が語られました。「残存者利益」です。ガソリンが減少してもSS母数が大きく減少するから、残ったSSの販売原単位は高くなる、というものです。実際に、自由化以降のSS原単位は50KLほど増えていました。
それをコロナ新常態はSS原単位を大きく引き下げてしまいました。特殊要因による一過性と考えることもできるでしょう。
しかし、小売業全体の「常態」は4月以降に一転しています。流通フリーライターの方と会ったら、「小売業のキーワードは“非接触”」と言います。誰もが分かっていますが、店舗に行くより配達を望む人が増えて、ウーバーイーツの4-6月の注文金額が同期比400%になっています。独身者が多かったのが、家族の注文が激増したそうです。
日本マクドナルドは、非常事態宣言の一時期に店舗飲食を中止して、テイクアウトとデリバリーだけにしました。それで5月の既存店売上げを15%伸ばし、客単価は倍増しています。
店舗での接触を忌避する心理がいかに大きかったかが分かります。SSでも似たようなことが起こっています。複数のセルフとフルSSを持つCOC会員によると、確実にフルの歩留まりが高いと言います。外に出てノズルを握らなくて良い、という非接触が好まれているのかもしれません。
米国サンフランシスコなどでガソリンデリバリービジネスがあります。資源エネ庁は「SS過疎化対策」として実証実験もしましたが、コロナの消費心理を考えれば広く展開したいところです。デリバリーニーズが高いのですから。しかも、スマホでオーダーして決済も完了します。店頭セルフ給油と違って、配送手数料を取れます。
油業報知新聞で西尾直毅さんが主唱する「ガソリン粗利益率20%」も合理的に実現できます。(現状で20%取るには“お話合い”が必要になりますが…)

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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