COCと独立経営<727>元売が「元売」を自己否定し始めた – 関 匤

ガソリン市況は、大局的にはコロナの恩恵が維持されています。しかし、元売レベルでは水面下、表面ともにいろんな動きが出ているようです。製油所の再編が決まったとか業転のバキュームが行われているとか、独立系にとって面白くない話ばかりですが…。
ところで以下のような事業を目にしました。
「EVバス用蓄電池のリース・リユース・リサイクルモデルの構築」、「モビリティステーションネットワークの構築」、「EV普及につながる電池交換ソリューション」、「営農型太陽光発電の普及」、「農作物自動収穫ロボットの開発」、「藻類バイオマスの活用」、「熱電素子による排熱利用」、「再生可能エネルギーの地産地消」…。
脚光を浴びるDX(デジタル・トランスフォーメーション)企業の事業領域にしか見えません。しかし、やっているのは石油元売のENEOSです。
昨年4月、同社に「未来推進事業部」が発足しています。①まちづくり、②モビリティ、③低炭素社会、④循環型社会、⑤データサイエンス&先端技術を注力領域として長期レンジで未来事業の可能性を模索しています。
元売は歴史的に新規事業を自己完結しようとする傾向がありました。始まる時は鐘太鼓で始まるのですが、いつの間にか姿を消す事業が大部分でした。ところが未来推進事業部は外部の知恵を集めるのが仕事です。昨秋にベンチャーキャピタルを設立して、ビジネスモデルを開発して市場化を開始しようとするスタートアップ企業に投資を行っています。
投資予算枠は150億円もあって、1年で9件37億円を投資しています。1件数億円になります。スピードを重視しており、可能性のありそうな企業には総張りのように投資を売っているようです。どの事業も全く石油の臭いがしません。(下手に石油と関連付けると特約店が形を変えた事後調整と勘違いするかもしれません)
世界的な脱炭素の大合唱の中で、元売は現在の石油市況依存のままでは非常に厳しい状況におかれます。コロナ禍での石油減販がこういう動きに拍車を掛けています。
“石油の天敵”であるEV開発を促進する技術に元売が投資しているわけです。それほどに、企業の将来を深刻に考え始めているのでしょう。社員が意識変革して、石油業界でしか通用しない「元売」という言葉が死語になる日は近いでしょう。
系列店はもちろんPBも元売という存在を意識してきましたが、従来の元売像はすでに変貌してしまったようです。
SS経営者が考える元売像も同様だと思います。今後の多様な分野への投資を考えれば、国内石油流通は極力シンプルに進めることでしょう。すでに元売再編を重ねて公益事業の配給統制の実態です。取引関係とパフォーマンスで選択と集中となるでしょう。
ガソリンは無機質な商品ですから、本来の性格を反映した取引関係になるだけですが。コモディティ取引の原点に立ち返ることになるでしょう。
先日、COCでズームの研修会を開催しました。石油流通ではひたすら効率化を進める元売と脱炭素の自動車社会とビジネスモデルの大転換期を実感できて、非常に意義ある時間となりました。ガソリンにこだわっていては、コストコなど一部のメジャー選手を除いてPBは生き残れません。出席者の多くは、中小企業として得意分野にいかにDXをコネクトするか、難しいけれど挑戦しがいのある経営テーマを得たと思います。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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