COCと独立経営<732>EVやFCVよりそこにいる消費者 – 関 匤

昨年の正月は何の屈託もなく、酒を呑みながらテレビのお笑い番組を観ていました。あの“お気楽なふつうの時間”に猛烈な郷愁を覚えます。

昨年暮の政府による「カーボンニュートラル戦略」なる公表で“2030年にガソリン車が無くなる”と過敏に反応するSS経営者が少なくないと思います。同時期に本稿で書きましたが、私は2030年にはまだまだガソリンを燃料とする乗用車が堂々と走っていると確信しています。

なにしろ、日本も欧米もEVの定義にハイブリッド(HV)が入っていますから。日本では統計上6台に1台がEVですが、その99..7%がHVです。政府戦略もHVでお茶を濁す考えでしょう。

経産省とENEOS、トヨタは燃料電池車(FCV)を強力に推進します。経産省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、「水素ステーションへの規制改革等によるコスト削減・導入支援」としています。仮に実現しても30年先です。

FCVに関しては、2014年にトヨタがミライを発売して、お囃子の日経新聞と電通が大騒ぎしてくれました。COCも危機感を覚えて、有能なアナリストの勉強会を開催したほどです。

でも6年経って、FCVの登録台数は何台か。3700台ですよ。まあ、保有者がガンガン公道を走っていればそれは良いことなのですが…。1月7日時点でトヨタHPで水素ステーションを確認したら全国で133カ所ありました。この数字を人口比にすると顧客数は「1人」です。東京限定で4店舗のいわもとQという蕎麦屋さんは人口比3人います。

顧客が1台しかいない優雅な水素ステーションは130カ所が「休止中」です。3カ所だけが「要相談」。コロナ禍の飲食店が見習うべき(?)見事な休業ぶりです。3700台のFCVどうしているのでしょうか。

だから中小小売業であるSS経営者はカーボンニュートラルなんぞ「あさっての話」でよいのです。むしろ、自動車に乗る消費者の意識変化を見据えることが大切と考えています。

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私は常々思っているのは、SSのマーケティングの基本思想とりわけ元売のそれは高度成長期から変わっていないのではないかということです。モノがどんどん売れた時代のマーケティングです。マーケティングの方程式は、数量×粗利の最大化でした。

そして現在に至るまで、給油来店も油外もキャンペーンという利益最大化モデルを維持しています。それは供給者にとってはオイルやタイヤの効率的な押し込みになります。しかし消費者にはどう映るのでしょう。

消費者の車に対する感覚は高度成長期と大きく変化しています。個人オートリース、期間限定レンタル、カーシェアリングなどサブスクリプションモデルで、スマホと同等の位置付けになりつつあります。ウェブで車を買う人もいます。

EVや水素を気にするよりも、今そこにいる消費者、その多様性への変化対応こそが喫緊の課題ではないかと思うのです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局

 


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