COCと独立経営<743>脱カーボンに怯えない – 関 匤

昨年12月、政府が「カーボンニュートラル宣言」を出して、SS経営者が先行きに不安を覚えています。COCでも「出口のタイムスケジュール」を意識する人もいます。

石炭が石油に転換した時は、同じ炭化水素であること、ボイラーを転換すれば需要家を維持できたので、石炭専仲業者や販売店は自然な形で石油販売業に移行していきました。また、石炭業者は必要から広い土地を持っていたので、SSにも参入できました。

石炭元売であった鉱業会社も、従前の石炭卸ルートを石油卸に業態転換して、自由化前まで三菱、三井、住友の名が付いた石油大手商社が力を持っていました。

一方、カーボンニュートラルとなると、CO2排出量と削減量をイコールフィッティングしなければなりません。炭素Cが八個あるガソリンの代わりに、Cがゼロの太陽光あるいは水素で発電した電力で車を走らせる、という理屈が出てくるわけです。

ハイブリッドを除く完全電動EVになると、石炭業界のようなソフトランディングは期待できません。家庭も含めて随所に無数の給電箇所が出現します。SSは細々とガソリンを売りながら、給電箇所のワン・オブ・ゼムになる…。

―といった話に、中小企業のSS経営者は悩む必要はありません。明日に何が起こるか分からないのに、2030年など想像もできませんから。ただ、色んな本を読むとか識者の話を聞くとかして情報だけをインプットすることは必要でしょう。

それと脱カーボンとが独り歩きしていますが、「構想」、「計画」、「将来像」といった言葉のオンパレードで、いつどうなるのかという具体像は見えてきません。

ということでCOCは集合研修できない20年度はリモートで石油、自動車、農業、流通サービスのトレンド等々で講師をお招きしました。どうしても主要テーマはゼロカーボンや自動車社会の変化になります。かといって「脱ガソリン反対」というのではなく、EVの技術革新の動向、CASEやMaaSはどういうことかという基礎知識を頭に入れて、今すぐ何をどうすべきかではなく、マーケティングの方向を想像だけでもできればいいかなと考えています。

中小企業の小売業は、物事が顕在化してからでも変化対応できます。セルフサービスが解禁された時、一部が過剰反応して明日にでも石油販売業界が破滅するがごとく大反対運動を展開しました。でも20年余り経って、当事者がしれっとセルフSSを経営しています。こういうのを見ていると、時代に過剰反応するよりも商売、マーケティング的な視点で物事を考える方が健康的かなと思います。

逆に、石油メーカーである元売にとっては深刻なテーマであり、長期的な事業計画を考える必要に迫られています。だから、SSやガソリンと必ずしも関連しない領域まで様々なトライアルを始めています。

日本ではEVの定義にHVが入ったことで、2030年まではガソリンの時代という「時間稼ぎ」ができます。10年あれば、その間に使い勝手の良い新技術、サービスがどんどん登場します。全く違う世界に事業転換するにしても、SSを業態転換するにしても決して悲観する必要はないと思います。

狭いCOCの中だけ見ても、社歴を見ると創業時は、肥料屋さん、米穀集荷、水産物の海運、藁加工、新聞販売店、喫茶店…等々と石油から始まった会社が少ないほどです。

つまり沿革のどこかでSSに事業転換しています。まして、ご先祖様を遡ればこんなことやっていたの!と驚愕するかもしれません。

今の状況も同じことが言えます。CASEが本格的に動き始めた時、必ずそれを加速するために中小企業のインフラを利用したい人が出てきます。AI、IoTはまだ肌身で実感できませんが、私のような人間にでも理解できるようなサービスが必ずやってきます。

仮にガソリンが売れない時代が来るとしても、容易に変貌できるのが小売業だと思います。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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