COCと独立経営<749> 「GS無料点検お断り」のステッカー – 関 匤

ゴールデンウイークはCOC会員向けのレジュメ作成で終わりました。調べることがいっぱいあったのでググっているうちに変なものを見つけました。

楽天のネット通販で売っています。その名も「GS無料点検お断りステッカー」です。商品説明に「GSでのセールス対策に!ガソリンスタンド無料点検お断り単品【迷惑セール・勧誘】セールスお断り」とあります。

店頭で一生懸命働いているスタッフからは、こんなものを紹介するだけでガンが飛んできそうです。しかし、消費者からはこのように見ている目線があるということです。“無料点検の魂胆見え見えだよ”です。

非常に悲しくなるのは、こんなステッカーが現れるほどに業界のマーケティングが旧態依然であるということです。

私が業界に関わった昭和の時代に無料点検は当たり前に行われていました。「オープンボンネットサービス」です。それと灰皿清掃です。お急ぎでない消費者は受け入れていました。そこでオイルの汚れ、スパークプラグやバッテリー液の劣化、クーラントの減り等々が指摘されると、何割かの人は購入していました。

時代背景として、新車はリコール制度が機能しておらず、中古車はオークションで評価点が付かないですから乗ってみなければ分からなく、道路事情の悪さも手伝ってSS来店時には何らかの不具合が見つかりました。

加えて、車に価値を持っていた時代なので自動車用品を好んで買い求める人も多かったのです。ある時代までのカーショップの成長はアクセサリー、高級タイヤとオイルが原動力でした。

だから、昭和のこの時代の「無料点検」はまだ賞味期限内にありました。ガソリンもアフターマーケットも成長していましたから方法論としてアリでした。

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一方、消費者が自然にセルフSSで給油し、自動車は新車メーカーのリコール宣言が当たり前となり、オークションで中古車の品質が担保され、ガソリンもアフター市場も成熟という縮小均衡の時代になりました。

私の感覚ですが、無料点検は掛売り主導時代の方法論であったと思います。ガソリン価格が掛け安現金高という時代がありました。それがセルフで個人現金客が主体となる時代に持ち込まれたことで、消費者のアンチテーゼとして「お断りステッカー」を作る人が現れたのでしょう。消費者に「無料点検のマーケティング」が有効なのかどうか、業界としてこれを検証する動きはありません。

その代わり、前回書かせてもらったように水面下で自己物件の経営者に“業界通説”に頓着しないビジネスモデルが生まれています。こういう経営者は業界常識の方法論と消費者のミスマッチを認識しています。

独立系のCOCだからどうでもいいのですが、そろそろ「キャンペーン油外=押し込み」を考え直すべきです。SS店頭は刹那的な粗利増を得ますが、それは売上げの先食いであって翌月以降の落ち込みが目に見えています。

SS経営者にも宿痾ともいうべき性向があります。キャンペーンでスタッフが忙しそうにしている姿に満足することです。そこで思考停止している人もいます。

“企業は経営者の腹以上には大きくならない”という名言があります。スタッフは「愚直な店番」でよいのか、経営者を脅かすほどの提案力と行動力をもつのがよいのかという選択です。私はSS経営者の9割は前者と見ています。1枚のステッカーから大きく話が飛躍してしまいました!

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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